有珠山復興支援現地フォーラム

概 要

日時:6月18日午後4時〜

場所:伊達商工会議所会議室

呼びかけ人
 山口二郎 北海道大学付属高等法政教育研究センター長・同大学院法学研究科教授 (行政学)
 宇井忠英 北海道大学大学院理学研究科教授(地球惑星科学専攻・火山地質学)
 松田忠徳 札幌国際大学観光学部教授(観光文化論)

パネル参加者:阪神・淡路大震災での専門家支援組織関係者
 増田大成・被災者復興支援会議メンバー(96/7-99/3)(当時・生活協同組合コープ こうべ副組合長)
 永井幸寿・阪神・淡路まちづくり支援機構事務局長(兵庫弁護士会弁護士)
 安崎義清・阪神・淡路まちづくり支援機構事務局委員(兵庫司法書士会副会長)
 中川和之・有珠山噴火災害支援委員会・ひょうご事務局(時事通信社神戸総局)

プログラム:
 基調講演 山口
 道観光の抱える課題と西胆振 松田
 火山との共生 宇井
 阪神・淡路大震災で第3者支援組織が果たした役割 増田、永井、安崎、中川
 パネル討論、会場との意見交換(司会・山口)
 呼びかけ人まとめ 山口

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概要報告

 行政学が専門の山口さんからは「地元の内発的な、自立の動きが復興の一番の原動力で、それをどう支えるか考えねばならない。火山と共存、共生する地域作りを、次世代を視野に入れ、また広域的な発想による将来像が必要で、行政だけでは対応できないこともあるので、住民からの要求や不満、ビジョンをコーディネートする場が必要。いろんな人の名前の声、将来ビジョンを語り合うような場で、時間をかけて議論をできる道筋を付けることが、地域政策などを議論してきた学者の役割ではと考えている」と述べました。

 観光文化論が専門で、洞爺湖温泉出身の松田さんは「全国的に見て、温泉観光地はけっして暗くない。洞爺湖温泉が被災したことで、全道的に影響があると言うことは、逆に道内で果たす役割が大きいということ。熱海の集客が落ち込んでいるように、大きなホテルが客を抱えて外に出さないやり方ではだめ。大分の湯布院とかは、客をいかに外に出すかを長年やってきた。そこには物語性が必要。この地もこの噴火を期に、再生のためのドラマ、物語を作る必要がある。エリアとしての魅力を発信して欲しい。世界で初めて地震計が設置されたのが、有珠山。今回、完璧な火山噴火予知がなされた。世界で一番安全で、噴火口に近い温泉として、被災した建物も残したエコミュージアムにもする。23年前と違うのは、全国から支援が受けられること」と提言されました。

 また、火山地質学の宇井さんも「このまま終息に向かう可能性が最も強いが、今年末までに終息は無理だろう。21世紀には3回噴火がありうる。そういう場をどう使っていくかを考える。過去には火砕流もあった。しかし、火山を資源としてとらえ、観光資源にしていく。かつての昭和新山の時の鉄道橋などの残骸も残っており、財産だ。これを地域再生に積極的に活用して、観光のターゲットにして欲しい。火山を隠さずに、火山災害に強い観光まちづくりを」と訴えました。

 増田さんからは「被災者復興支援会議で、140回以上に及んだ移動いどばた会議で、住民の声を聞き、また行政も本音の話をしたことを通じて、13回の提言を行った。シナリオが決まっている審議会などと違って、筋書きのないドラマだった。住民と行政の間に立って公平、公正にものをいう機関が必要。物理的な損害である災害は復旧できても、身に降りかかってくる災難は尾を引く。被災者がネットワークしながら体験を語り合い、取り組んでいければ。阪神間はこの5年間、自治の道場になった。日常ではいろんなしがらみがあるが故に、第3者としてものが言える機関が入ることで、実現できることがあるのでは」と報告。

 永井さんは「危険であるという状態が長く続く火山災害は、結果が一気に出る地震とは異なるが、法律問題はいずれ出てくるだろうと思う。災害時に行政だけを頼りにしてはならないことは、自覚させられた。この仕組みが地震の直後からあれば、先鋭的な対立が防げたのではないかと思っている。こちらでも、弁護士、税理士、司法書士、建築士などの『士』の団体が連携した我々のような組織が必要だろうと、道内の団体にも呼びかけようと考えている」と述べ、安崎さんも「初期の相談は、誰かにつらいことを聞いてもらいたいという感じだったが、だんだん冷静になると具体的な話になってきた」と説明されました。

 中川からは、過去の被災地の地元ボランティアが中心になって経験に基づく知恵の支援をしようという有珠−ひょうごの設立の経緯や、ボランティアと専門家の協働などの経験について話しました。

 会場とのやりとりの時間がなかったためか、発言が少なかったのがちょっと残念でしたが、最後に山口さんから「神戸で民間の第3者的な場が大きな役割を果たしており、有珠山地域の復興でもそういう意見交換の場が必要で、そこで当面の避難生活から、地域再生とまちづくりまで考えていくことが求められる。火山との共生と、広域的な視点で、とりあえずはこの3人が中心となって、こういう場を設けていきたい。「いどばた会議」などの方策も参考にして、復興をサポートする仕組みを拡充していきたい」と呼びかけ人のまとめをされました。

 道新、朝日、毎日、読売、日経が翌日に記事を掲載し、NHKと民放も夜や朝のニュースなどで地元には伝えられました。

 今後は、今回のフォーラム報告書を作成して、この場への主体的な参加者を増やし、いどばた会議などを実施できる体制を目指すと共に、8月の下旬に2度目の現地フォーラムを実施する方向で検討されるそうです。このフォーラムに対し、全国からどのような支援をしていけばいいのか、考えていければと思っています。(中川)

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