被災者復興支援会議

阪神・淡路大震災−兵庫県の1年の記録から)

 1 被災者復興支援会議
 1 設立
 震災から半年が経過した平成7年7月17日、県の呼び掛けに呼応し、12名の有識者で構成する被災者復興支援会議が発足した。
 同会議では、フェニックス計画の策定等を通じて「被災地」の復興が推進されている一方で、将来の生活再建への展望が見いだせず、明日の暮らしに不安を抱く被災者が少なくないとの認識の下に、被災者と行政の間に立ち、被災者の生活再建に向けた課題等を客観的、総合的に検討し、「被災者」の復興に向けた提案等を、行政、被災者 双方に向けて行っていくこととされた。
【被災者復興支援会議メンバー】
 草地 賢一 (阪神大震災地元NGO救援連絡会議代表)
◎小西 康生 (神戸大学経済経営研究所教授)
 小林 郁雄 (コー・プラン代表)
 塩見 薫  (NHK神戸放送局長)
 品田 充儀 (神戸市立外国語大学助教授)
 島田 誠  (海文堂書店代表取締役社長)
 瀬尾 攝  (社兵庫県医師会長)
 馬殿 禮子 (武庫川女子大学非常勤講師)
 林  春男 (京都大学防災研究所助教授)
 増田 大成 (生活協同組合コープこうべ副組合長)
 清原 桂子 (県立女性センター所長)
 栗原 高志 (兵庫県理事(県民運動・防災担当))
◎印は座長
 2 活動内容
 (1) 現地意見交換会
 被災者の生活実態や生活再建に向けた課題等を把握するため、被災者復興支援会議 のメンバーが現地に赴き、被災者や被災者支援団体との意見交換会を開催した。これ は、発足間もない7月29日を皮切りに、毎週2〜3回、同会議メンバー2〜3名のチ ーム編成で行われた。
 (2) 土曜いどばた会議
 被災者と会議メンバーが寄り合い、生活再建に向けた意見や提案、さらに不安や悩 みについて自由に話し合える場として、土曜いどばた会議が開かれた。これは、8月 5日を第1回として、その後、毎週土曜日、同会議の事務局が置かれた兵庫県民会館 で行われた。
 (3) 常時窓口の開設
 電話、FAX、手紙を通じて被災者からの意見、提案等を常時受け付けることと し、事務局にその窓口が開設された。
 (4) 情報の収集、提供
 ア 復興かわらばんの発行
 被災者復興支援会議の活動状況をはじめ、行政や被災者に向けた提案、同会議が活 動の中で知り得た被災者や被災者支援団体の先進的な取り組み、さらに、被災者の生 活再建への支援情報などを掲載した被災者復興支援会議情報誌「復興かわらばん」が 発行された。
 これは、概ね毎月1回発行され、仮設住宅自治会やボランティア団体、フェニック ス推進員等を通じて広く被災者等に配付された。
 イ 情報コーナーの開設
 県、市町、民間団体等の被災者復興に関する情報のほか、震災関連の図書について も閲覧できる情報コーナーが、同会議事務局に開設された。
 (5) 提案活動
 同会議の活動を通じて把握した被災者の生活再建に向けた課題等について、メンバ ー全員による討議を行い、必要なものについては行政や被災者に対して提案が行われ ている。
これまでの提案の概要は次のとおり。
 第1回提案(8月28日)・・ 被災者の生活再建を進めるに当たっての基本的考え 方を示すとともに、仮設住宅等について当面緊急に取り組むべき課題について提案。
 第2回提案(9月25日)・・ 第1回の行政に対する提案に対し、第2回は被災者 の自助、共助について提案。
 第3回提案(10月30日)・・ 仮設住宅自治会づくりフォーラムの開催を提案し、 広く被災者や関係者の参加を呼びかけたほか、県外の被災者への対応等について提 案。
 第4回提案(12月11日)・・ 震災後10カ月余が経過した時点の諸課題について 提案するとともに、冬場の健康対策を考える被災者 復興支援会議第2回フォーラム の開催を提案。
 第5回提案(3月1日)・・ 震災後1年余を経過した段階での現状認識と今後 の被災者対策の視点について提案。
 (6) その他の活動
・ 被災者と行政の中間的な活動体の特性を生かし、被災者、被災者支援団体 (者)、行政などを「つなぐ」諸活動が行われた。とりわけ、被災者同士が共に助け 合い、支え合う人間関係を育むことが重要であるとの認識の下に、11月4日には、被 災者、被災者支援団体、行政関係者ら約120名の参加を得て、仮設住宅自治会づくり フォーラムが開催された。また、12月16日には、震災後10カ月余が経過して、 厳し い寒さに向かう時期の被災者の健康対策について、医療関係者の専門的な意見を交え ながら、関係者が被災者とともに考えるフォーラムが開催された。
・ さらに、将来への展望が開けず、明日の暮らしに不安を抱いたまま年末、年始を 迎えようとする被災者が少なくないことから、これら被災者に少しでもいたわりや励 ましの気持ちを伝えようと、全国に募金を呼びかけ、被災者復興支援会議座長のメッ セージとともに「お正月用おもち」を被災者に届ける『年末「愛のもちより」活動』 が展開された。これを理解し支援する県からは、知事の被災者への励ましの言葉を添 えた。
 この活動には、全国から多数の募金が寄せられたほか、県職員723名、一般県民 50名のボランティアが参加するなど被災者のことを心にとめている人々の善意の輪が 広がった。

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阪神・淡路まちづくり支援機構

 支援機構は、阪神・淡路大震災の後に、被災地の市民のまちづくりを支援するために、各種専門家団体とコンサルタント、学者の協力を得て、1996年9月に設立した組織。専門家は、弁護士、税理士、司法書士、土地家屋調査し、不動産鑑定士、建築士および、これらの資格を有するコンサルタント。このような公的資格を有する専門家団体が協力して団体を作ったのは全国でも先例がない。
 支援機構にはまちづくりに必要な専門家がすべてそろっており、このような専門家同士が連携して住民のまちづくりを支援してきた。阪神・淡路大震災の被災地住民からの派遣要請があれば、事務局委員会で審査して、各専門家団体の推薦で登録された最も適任の専門家を派遣できる。専門家は、住民のまちづくりのプランの立案・実施の協力や、学習会の開催、相談その他の専門的な対応を行ってきた。例えば、あるマンションの再建に建築士、土地家屋調査士、司法書士、税理士、弁護士の5人が派遣されて住民だけでは取り組めない課題解決にあたった。また、支援機構には学者や実務家30人による付属研究会を設け、提言や出版を行っている。今後は、まちづくりを支援する組織が全国に広がるように社会啓発を行うこととしており、今年2月には東京・市ヶ谷で「まちづくり支援全国交流シンポジウム」を開催した。

・構成団体
 兵庫県弁護士会、大阪弁護士会、近畿税理士会、土地家屋調査士会近畿地域連絡協議会、(社)日本不動産鑑定協会近畿地域連絡協議会、(社)日本建築家協会近畿支部、近畿建築士協議会、建築士事務所協会近畿ブロック協議会、近畿司法書士会連合会
・協力団体
 (社)日本建築学会近畿支部、都市住宅学会関西支部
・代表委員
 北山六郎弁護士(兵庫県弁護士会)
 広原盛明前京都府立大学長(都市計画)

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有珠山噴火災害支援委員会・ひょうご

 この度の有珠山噴火災害で、有珠山周辺の人々は甚大な被害を受け、長期化に伴い 不自由な生活を余儀なくされています。正式に噴火活動の終息宣言が出されるまでは 様々な問題を抱えることになり、その対応策も整備されなくてはなりません。また長 期化に伴う被災地への総合的救済として制度整備や新しい救済制度などの設置も行わ なければなりません。雲仙普賢岳災害後になされた90項目の救済事業には随分今回の 有珠山噴火災害にも該当できるものが多々あります。
 一方今回は災害ボランティア活動基盤の整備などの問題も議論されており、雲仙普 賢岳の経験はもちろん、阪神・淡路大震災及び各地水害被災地での経験を生かした災 害被災地への支援のあり方なども随時提案あるいは実施する必要があると思われま す。
 これらの過去の事例や経験を整理し、災害後の「くらしの再建」と「ボランティア 活動の在り方」等について提言・提案をする委員会として「有珠山噴火災害支援委員 会・ひょうご」(略称「有珠−ひょうご」)が4月29日設立されました。

●「有珠−ひょうご」の活動内容
 1.雲仙普賢岳災害後に適用された様々な救済事業や、阪神・淡路大震災で実施さ れた支援事業などをさらに発展させて、適切なタイミングで今回の有珠山噴火災害の 被災地救済にも適用されるべく必要な提言・提案をする。
 2.被災現地・道内・及び全国の有珠山支援の活動と連携し、広く募金活動を呼び かける。
 3.その他、必要と思われる活動は行う。

●現在の構成団体(5月15日現在)は以下の通りです。(22団体、順不同)
都市生活地域復興センター、神戸YMCA、コープこうべ、阪神・淡路大震災被災地 NGO恊働センター、騎兵隊(山口県)、(有)エイディアイ災害救援研究所、震災を生き る宗教者の集い、(特)島原ボランティア協議会、震災がつなぐ全国ネットワーク、ト ルコ北西部地震緊急救援委員会、那須町水害ボランティアセンター、くれ災害ボラン ティアセンター・大きな和、ハートネットふくしま、高知水害協働ボランティアセン ター、神戸学生青年センター、(特)ブレーンヒュ−マニティ、アートエイド・神戸、 レスキューストックヤード名古屋、北海道ボランティア・サポートセンター、奥尻町 ボランティアセンター、震災から学ぶボランティアネットの会、ガーディアン・エンジェルス

●共同代表 芹田 健太郎(市民とNGOの「防災」国際フォーラム実行委員長)(神戸大 教授)
竹本 成徳(コープこうべ理事長)
村井 雅清(被災地NGO恊働センター代表)
      山口 徹 (神戸YMCA総主事)

●事務局
  被災地NGO恊働センター  神戸市兵庫区中道通2-1-10(〒652-0801)
  TEL 078-574-0701 FAX 078-574-0702
e-mail:ngo@pure.co.jp hp:http://www.pure.co.jp/~ngo

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「有珠−ひょうご」から北海道知事への提言書

北海道知事
堀 達也殿

 雲仙普賢岳噴火災害及び阪神・淡路大震災においては、政府や地方公共団体等が行 う各種の災害対策事業を補完することを目的として、それぞれ財団法人雲仙岳災害対 策基金、財団法人阪神・淡路大震災復興基金が設立されました。両基金の柔軟かつ弾 力的な運用により、これまで被災者・被災地への支援において多大の成果が上がって おります。今回の有珠山噴火災害の発生とその長期化に鑑み、ぜひ貴職におかれまし ても、雲仙普賢岳噴火災害及び阪神・淡路大震災での教訓を生かしつつ、有珠山噴火 災害の被災者等支援策をさらに発展させて頂きたく、下記の通り提言いたします。

提言

一、政府との連携のもと、すみやかに有珠山噴火災害対策基金(仮称)を設置されること

以上

提言理由

(1)自然災害の被災者等に対する生活保障・損失補填等に関しては、成文法的な制 度が現状では不十分であり、被災者等の現実的な困窮を救う法的な手段はそもそもの 始めから限定されざるを得ない。

(2)特に、他の一過性の災害と異なる今次の有珠山噴火災害のような大規模長期化 災害に対しては、災害対策基本法、災害救助法等からなる我が国の災害対策法体系は これを想定外としているといっても過言ではない。

(3)したがって、今次有珠山噴火災害においては、現行法制度の忠実な解釈にもと づいて政府、地方公共団体等が行うことのできる諸支援策は、いかにこれらを柔軟か つ弾力的に運用しようとも自ずと一定の限界があり、被災者等の現実の窮状を救済す るためには、さらに何らかの形でこれら諸支援策を補完する必要がある。

(4)国民・住民の連帯と相互扶助の精神に基づいて自然災害の被災者等に対して現 行法制度からさらに一歩踏み込んで最低限の生活保障・損失補填等を行うべきことに 関しては、すでに一定の国民的合意形成がなされていると判断すべき相当な根拠が存 在する。

(5)しかるに、法制度の整備に今から取りかかる時間的余裕がないことは明らかで ある。

(6)以上のような事情に鑑み、「融通無碍」とも評される実績をもつ災害対策基金 を今次災害においても直ちに設置すべきである。

2000年5月1日
       有珠山噴火災害支援委員会・ひょうご
共同代表 芹田 健太郎(市民とNGOの「防災」 国際フォーラム実行委員長)
竹本 成徳(コープこうべ理事長)
村井 雅清(被災地NGO恊働センター 代表)
               山口 徹 (神戸YMCA総主事) 

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