SNSで分かりやすく発信、印刷して観光関係者にも配布―桜島ミュージアム
災害情報学会ニュースレター第63号(2015/10) 特集:特集火山災害と住民とのリスクコミュニケーション

中川和之 時事通信社

 火山噴火時には、緊急的の避難行動のためのクライシスコミュニケーションも大切だが、噴火という現象の特性上、住民・地域が長期化する事態に納得して対応するためのリスクコミュニケーションも重要だ。直後には、マスメディアも大きく報道をし、住民が知りたいこともある程度は伝えられる。しかし、表面的な現象が落ち着いてくると、報道では大きな変化しか伝わりにくく、現状のリスクがどの程度なのかが地域住民らに伝えられる機会は少ない。
 桜島で今年8月15日に噴火警戒レベルが4に上がった際、鹿児島市と気象台は、翌16日夕に2カ所の避難所で傾斜計や地震計のデータを元に住民説明会を行った。これはクライシスコミュニケーションとしては、よい対応だった。
 その後、住民や観光事業者に対して、きめ細かな情報発信でリスクコミュニケーションを行ったのが、NPO法人桜島ミュージアム代表の福島大輔氏だ。元京大桜島火山観測所の研究員で、桜島・錦江湾ジオパークのキーパーソンだ。
 福島氏は、15日に警戒レベルが上がった直後から、9月1日にレベルが下がるまでFacebookで71回、書き込んだ。市の危機管理課の直後の様子の報告から始まり、京大観測所からも情報収集し、その日のうちに大正クラスの大噴火はなさそうとも発信。15日夜には「今、観光に来ることはお勧めできませんが、この状況を理解した上で、桜島に来ることは可能です」と書き込み、この間で最も多い581「いいね!」を獲得。15日だけで9万アクセスがあったという。
 その後も、コンビニが営業している様子や、訪れた観光客へのガイドの様子も紹介。福島氏は「『安全です』と発信しがちだが、今回は『観光をお薦めしませんが、来ることは可能です』と伝えたら、意外に信頼された」と語る。
 マーケティングの手法で伝える相手を意識してタイトルを付け、「噴火警戒レベルが5になったら全島避難なの?と思っているあなたへ」、「どのくらいの規模の噴火が予想されているの?と気になっている方へ」と題して詳しく説明。これらの情報を紙に印刷して、避難所以外にもホテルやお土産屋さんなどに配って回り、情報不足で不安だった観光関係者にも伝えて回ったという。

トップ|index|中川 和之

転載やリンクの際はご連絡下さい