トルコ地震災害復興支援専門家チーム(兵庫県・神戸市)の会見(兵庫県庁、99.9.9)で配付された資料

調査報告
 1999年9月7日
 トルコ国地震災害復興支援専門家チーム(兵庫県・神戸市) 団長 佐々木直義

 兵庫県と神戸市の職員及びJICA関係者からなる当専門家チームは、8月27日から9月7日までの12日間、トルコを訪問し、8月17日に同国西部で発生した大規模地震災害(以下「マルマラ地震」という)に関連して、被災地の視察、及び政府機関や被災地自治体などの関係機関との情報・意見交換を行ったところ、本邦における派遣決定から滞在中の活動までを通じて得た所感を次の通り報告申しあげる。
 
1.専門家チーム派遣の意義
 本線門下チームは、マルマラ地震に見舞われた被災地の復興を支援するため、阪神・淡路大震災からの復興を経験している兵庫県及び神戸市の教訓をトルコ側に伝え、伝言を行うとともに、我が国が協力すべき事項や協力に際して留意すべき点について、我が国政府に対し提言することを目的として派遣された。
 すなわち、同じ困苦を味わった兵庫・神戸が、震災発生の10日後に計11名もの職員を編成してトルコを訪問し、5年前の経験に基づく具体的な助言を行うことに大きな意義と期待があったわけであるが、7日にトルコ政府(公共事業省)に対し、報告書(別添※中川注セミナーでの発表要旨参照)を提出したことにより、チーム滞在中の主要な役割は果たし得たものと思慮する。

2.内外の関心度
 「5年前の被災地である兵庫と神戸が震災国トルコを訪問」ということで、今次派遣に対する内外の関心度は非常に高く、本邦出発前に関西国際空港で開催された結団式に置いては、関西の主要なテレビ局や新聞社など多数の報道機関が取材活動を行った。
 また、関西テレビ、神戸新聞、NHKなど、本邦からトルコへの同行取材があったのをはじめ、近隣国の特派員を送り込む報道機関もあり、とりわけチームのイスタンブール滞在中は、絶えず注目を浴びていた感がある。
 加えて、地元の報道機関も連日チームの同行を伝えていたが、2日朝はテレビの報道番組に小職以下数名が生出演し、正味17分間に渡りインタビューが行われた。トルコでは全国ネットの人気番組であり、多大な広報効果があったものと思われる。
 
3.セミナーの開催
 上記の通り、今次チームの来訪目的は、兵庫・神戸の経験・教訓をトルコの被災地のためにどう生かせるか、について探ることであるが、そうした経験・教訓を広くトルコの関係者に伝えるため、9月2日にイスタンブール、9月6日にアンカラにおいて、それぞれ「兵庫・神戸の経験から」と題して震災復興支援セミナーを開催した。
 チームのトルコ到着後に開催を決定し、準備日数がきわめて短かったにもかかわらず、イスタンブール、アンカラの双方で200名を超す出席が得られ、それら聴衆からは復興についての活発な質問や意見が出されていた。
 なお、セミナーには多数の報道関係者が詰めかけ、テレビ、新聞などで大々的に取り上げられたことから、広報効果は絶大であった。

4.提言
 本チームのトルコにおける調査・情報収集活動の成果から、同国の震災復興に対する我が国の支援に関し、次のとおり提言する。
(1)支援検討委員会の設置
 本チーム帰国後は、調査結果を基に、より具体的に震災復興の「道筋」を描き、復興計画策定のための助言として、トルコ側に提案していく必要がある。このため、兵庫県、神戸市、JICA及び、有識者からなる検討委員会を設置し、2〜3回の会合を経て、年内をメドに最終報告書をとりまとめ、災害復興への助言としてトルコに提出したい。(検討委員会には、本チーム派遣に際してさまざまな助言をいただいた林春男教授(京都大学防災研究所)にとりまとめ役を依頼するのも一案)

(2)仮設住宅の供与
 我が国政府は、阪神・淡路大震災の際の兵庫の仮設住宅500戸をトルコに供与する旨を表明済みであるが、供与に当たっては、トルコの気候風土に合致した仕様に変更する必要があり、冬の到来までわずかしかないため緊急性を有することに留意する必要がある。
 また、兵庫の仮設住宅を供与することは、仕様変更や輸送費がかかるなどの問題があり(海外からの支援による仮設住宅の調達は、トルコ自身にも膨大な出費を生じさせるため、自国生産の方が望ましいとの判断もある由)、追加的な供与を検討する際には、効果や経済性の観点から、現地調達とする(トルコ国内で製造している仮設住宅を調達する)ことも検討すべきと思料する。

(3)民間団体などへの現地情報の提供
 現状では、どこでどのような救援物資やボランティアを必要としているのかが不明で、無駄や重複が生じているところ、モノやヒトを、必要としているところに、必要なだけ投入できるよう、政府サイドで持つ情報は、日本の民間団体などに対して発信していくようなシステム作りをしておく必要があるだろう。とりわけ、送られてきた古着については、処理に困っている由であり、早急に関係団体に通報する必要があるものと思料する。

(4)被災者の心のケアに関する支援
 今次震災によって心に傷を受けた子どもたちが相当数に達するものと予想されるため、学校再開後の子どもたちの心の健康についての配慮が不可欠。ついては、被災地での心のケアに関わる専門家派遣、研修員受け入れの可能性について検討の必要がある。
 9月6日のアンカラでのセミナーでは、被害の甚大だったヤロワ市から数名の市職員が出席し、被災者の心のケアが最優先である旨力説の上、被災児童の心のケアにかかる専門家の派遣や研修員の受け入れにつき、要望があった。

(5)Creative Reconstruction
 地震における災害は大きな悲劇ではあるが、「災い転じて福となす」のとおり、新しい良いものを創る大きなチャンスでもある。これを契機にして、トルコの風土に合致し、かつ自然災害に対してより安全で快適な生活環境を創るための復興計画プラン作成への支援をすることが重要であると考える。また、被災を受けた地域の再建に対する長期的な視点からの協力を進めていく必要がある。


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