トルコ国西部地震災害救済国際緊急援助専門家(兵庫県・神戸市チーム)現地セミナーでの提言

マルマラ地震災害からの復旧についてのセミナーに参加し、次の提言を行った。
(1)マルマラ地震と阪神・淡路大震災との比較・別紙1
 (小原健男:阪神・淡路震災復興本部総括部参事・震災記念協会常務理事)
 ・人的被害、物的被害などについての比較

(2)食糧・救援物資・別紙2
 (岩崎靖:市建設局公園砂防部管理課管理係長)
 ・救援物資の受け入れ、流通を明確にし、援助を希望する組織に対し、充足している物資、不足している物資、送付方法についても入手し易いよう、情報を発信すること。
 ・テント生活をしている被災者の要望を把握するとともに、今後、長期化することも前提として必要となる物資のリストを作成すること。

(3)衛生対策・別紙3
 (川久道隆:県健康福祉部生活衛生課課長補佐兼乳肉衛生係長)
 ・仮設診療所(プレハブ形式)の設置
 ・精神医療、相談窓口(24時間体制)の設置
 ・インフルエンザワクチンの接種
 ・定期的な巡回健康相談の実施
 ・仮設シャワー及び洗濯場の早期設置

(4)教育対策・別紙4
 (中杉隆夫:県教育委員会高等教育改革室主幹)
 ・避難訓練の計画的実施
 ・災害に対する理解と技術向上のための防災教育の充実
 ・学校防災マニュアルの指針の提示
 ・心の相談センターの充実
 ・教職員の指導力向上のための研修会・講習会の充実
 ・スクールカウンセラーの配置

(5)仮設住宅の管理体制・別紙5
 (岩崎靖:市建設局公園砂防部管理課管理係長)
 ・各被災地ごとにテント生活者を分類し、個別データを把握するための実態調査を行うこと。
 ・建設予定地を決定する際、弱者(高齢者・障害者)対策を検討し、仮設住宅の使用に反映させること。(トルコの国情にあったコミュニティ)
 ・仮設住宅の建設と並行して、仮設住宅のソフト面を担当する組織体制を整備し、入居基準(優先順位・募集方法・決定方法など)及び、仮設住宅管理・運営基準を作成すること。

(6)テント村の運営・別紙6
 (林芳宏:市市民局市民安全推進室安全企画課推進係長)
 ・テント村の生活水準をあげること
 ・被災者の自立を助ける方策を取ること
 ・1999年をトルコのボランティア元年に

(7)ボランティア対策・別紙7
 (柏野繁樹:県生活文化部生活創造課主幹)
 ・ボランティアコーディネーターの設置
 ・自立復興支援のための長期的なボランティアキャンペーンの実施

(8)被災者の自立に向けた経済的支援・別紙8
 (古川厚夫:都市計画局再開発部六甲道南再開発事務所事業第2係長)
 ・トルコの国情、生活習慣に合った被災者の納得できる方法で、義捐金を早期に配分すること。
 ・継続的に義捐金を確保するため、被災地の状況を発信し続けること。
 ・生活再建に向けての道筋を付けるための経済的支援を実施すること。

(9)建物の解体・別紙9
 (加藤利明:市理財局財政部経理課工事契約係長)
 ・被災した建物を一斉ではなく、3つに分類し、優先順位を付けること
  早期に解体を完了させるもの(2次災害防止)
  早期に着手し、慎重に解体を完了させるもの(行方不明者)
  中期的に解体させるもの(軽度の被害、修理可能)
 ・地図情報システムを使った防災システムを確立すること。

(10)がれきの処理・別紙10
 (尾崎敏之:市環境局業務部産業廃棄物指導課主査)
 ・危険な建物について、緊急に国が解体すること
 ・建物の解体やがれきの撤去の時に、水道の復旧が前提となるが、十分な散水により粉じんの発生を防ぐこと。
 ・がれきを勝手なところに捨てないよう、早急に仮置き場を複数造ること。
 ・長期的には仮置き場での分別によりコンクリートを中心に再利用すること。

(11)住宅と都市の復旧計画・別紙11
 (富岡敏典:県まちづくり部総務課主幹)
 ア 応急仮設住宅
  限定された居住期間であっても、被災者にとって安心して住めるという視点が必要である。
 ・建設場所の選定については、立地条件に留意する。
 ・団地内を一つのまちと考えて、コミュニティの形成に寄与できる敷地内道路、空き地の確保などに配慮した敷地レイアウトが必要。
 ・生活利便施設が近くにない場合は、地域内に、仮設診療所、ミニ・コンビニ、公衆電話、仮設教室、地域集会所、臨時バス路線の運行などを仮設住宅団地の規模に応じて、整備する必要がある。
 イ 安全な住まいとまちづくり
  地震の発生頻度と人命尊重及び復興の社会コストを考えると、災害に強いまちづくり(都市計画、市街地整備)と地震に強い建物づくりが重要である。
 ・「災害に強く、安全で安心できるまちづくり」という視点を基本に据えた都市復興計画を策定する必要がある
 ・災害に強い安全で安心できる建物作りを進めていく必要がある。

(12)自立、互助、共助・別紙12
 (谷口正洋:県防災企画課事務吏員)
 ・防災教育の充実を図ること
 ・地域住民での救助活動ができる体制を整備すること

別紙1
(1)マルマラ地震と阪神・淡路大震災との比較
 (小原健男:阪神・淡路震災復興本部総括部参事・震災記念協会常務理事)

1 兵庫県と神戸市の関係
 1 自治体の関係
 2 位置関係
 3 兵庫県における神戸市のウエイト

2 マルマラ地震と阪神・淡路大震災の比較
        マルマラ地震  阪神・淡路大震災(うち神戸市)
        99.8.17 3:17am   95.1.17 5:46am
1 マグニチュード 7.4     7.2

2 人的被害
(1)死者数     14,494     6,398(4,569)
(2)行方不明者数  (25,000?)        3(2)
(3)負傷者数    27,234    40,082(14,579)
(4)最大避難者数        316,678(236,899)

3 物的被害
(1)倒壊家屋(棟数)72,412    248,388(129,611)
(2)倒壊世帯数     ?    446,485
(3)道路              6路線
(4)鉄道              9線
(5)電気             260万戸停電
(6)ガス             84万戸停止
(7)水道             127万戸断水
(8)下水道            260km総延長
(9)電話             47万回線不通

4 被害総額推計        9兆9千億円(6兆9千億円)

別紙2
(2)食糧・救援物資
 (岩崎靖:市建設局公園砂防部管理課管理係長)
1.現状
(1)水、食糧は充足されているように見えたが、救援物資についての情報は十分に収集できなかった。
(2)海外から数多く寄せられている救援物資の受け入れ、流通についても十分に調査できなかった。
(3)避難村の住民の中には、毛布・テントと言った生活物資を要望する人もいた。

2.提言
(1)救援物資の受け入れ、流通を明確にし、救助を希望する組織に対し、充足している物資、不足している物資、送付方法についても入手し易いよう、情報を発信すべきである。
(2)テント生活をしている被災者の要望を把握するとともに、今後、長期化することも前提として必要となる物資のリストを作成すべきである。

3.根拠
(1)救援物資は被災者を勇気づける意味で大いに効果がある。また、各国、援助組織の好意に答えるためにも、必要な物資の情報発信は必要である。しかし、時期によって必要な物資も変化することが予想されるため、不要な物資のストックが生じることとなる。これは処分の問題があり、できる限りストックを増やさないことが大切である。そのため不要な物資についても、明確に情報提供すべきである。
(2)神戸において、海外から物資が送られてくる場合、生活習慣の違いから日本では使用できない物資や説明書が外国語のため使用方法が分からない物資が届いたケースが数多く見受けられ、処分に困った経緯がある。また、暖かくなってからの毛布など、時機を逸した物資が届けられることもあるため、国情にあった物資の要求が必要である。


別紙3
衛生対策
 (川久道隆:県健康福祉部生活衛生課課長補佐兼乳肉衛生係長)
1.トルコの現状
(1)医療関係
 1) 被災場所により、格差はあるが、緊急医療活動は終了している。
 2) 医療、医薬品の供給状況は充足している。
 3) 避難所での診療所が不足している
(2)感染症・防疫関係
 1) 現状では、感染症の発生はないように思われ、また、仮設トイレ、ゴミ集積場の消毒が行われているようである。
 2) しかし、生活環境が良くないテントでの生活者の手洗いやトイレの消毒が行われない状況となった場合、感染症の発生の恐れがある。
(3)健康・生活環境関係
 1) テントでの越冬者が考えられ、また、被災者の大半は、行政などからの健康相談や衛生教育のサービスを受けていない。
 2) 水道が復旧していないため、洗濯や入浴(シャワー)が十分できていないことから、皮膚病や食中毒などの恐れがある。
(4)保健・医療行政
 1) 保健医療行政は、緊急を要する対策が必要であるが、中央政府が遠方にあるため、災害対策本部の対応と被災者(特にテント生活者)の間に距離があるように思われる。

2.提言
(1)医療関係
 1) 仮設診療所(プレハブ形式)の設置
 2) 精神医療施設、相談窓口(24時間体制)の設置
(2)感染症・防疫関係
 1) インフルエンザワクチンの接種
(3)健康・生活環境関係
 1) 定期的な巡回健康相談の実施
 2) 仮設シャワー及び洗濯場の早期設置

3.理由
(1)医療関係
 1) 避難所には、いくつかの仮設診療所や診療車が巡回しているが、テント生活者にはまだ十分ではない。
 2) 長期のテント生活による精神的ストレスによる疾病が急増する恐れがある。
(2)感染症・防疫関係
   冬期を迎え、高齢者や乳幼児など罹患すると重症化し、合併症を併発し易いため。
(3)健康・生活環境関係
 1) テント生活での疲労の蓄積、不安、不眠などの精神的な苦痛を訴える被災者が急増することから、保健婦、看護婦などにより定期的に巡回し、健康相談、栄養指導、衛生指導などを行う。
 2) 衣類の洗濯や入浴(シャワー)が十分おこなわれないことにより、皮膚病や感染症の発生が心配される。
(4)保健・医療行政
   保健医療行政は、地域の実情に応じた地道な行政サービスを行う必要があることから、現場に密着した県、市は独自な政策を行えるような裁量権を与える必要がある。
   今後、トルコ共和国の人々が安心した生活や行政に対する信頼を得るためにも大切なことである。

別紙4
(4)教育対策
 (中杉隆夫:県教育委員会高等教育改革室主幹)
1.現状
(1) このたびの地震では、学校が夏休み期間中に発生したものであったたため、直接、教育関係者の危機管理の問題にまでは至らなかったが、被災地では施設の損壊した学校が300校にも及ぶことから、災害の種類や程度、あるいは在校中、登下校中などの発生時別によるさまざまな場合を想定して、子どもたちの安全確保や教職員の役割について平素から十分検討しておくことが望まれる。
(2) また、不自由な生活を余儀なくされているテント村の視察からは、子どもたちのこぼれる笑顔が印象的であったが、彼らの心の奥底に潜む想像を絶する体験の恐怖が与えた心の傷が今後顕在化してくることが懸念される。幸いにもこの国においては、学校や学識者、国レベルにおいてもこの問題の重要性が早期から叫ばれており、心の健康問題への継続的かつ長期的な対策が望まれる。

2.提言
(1) 日常からの安全対策
 地震や洪水、地崩れ、雪崩などの災害が発生した場合においても、状況を的確に判断し、落ち着いて的確な行動ができる能力や態度を平素から培っておくことが望ましい。
 1) 避難訓練の計画的実施
 2) 災害に対する理解と技術向上のための防災教育の充実
 3) 学校防災マニュアルの指針の提示
(2) 心のケアの充実
 被災した子どもたちや教職員が、震災により生じた困難な現実を乗り越え、生き甲斐を持って生きていくための支援体制の整備に努めるとともに、長期的な視野に立った継続的・持続的な「心のケア」を推進していくことが望まれる。
 1) 心の相談センターの充実
 2) 教職員の指導力向上のための研修会・講習会の充実
 3) スクールカウンセラーの配置

3.根拠
(1) 阪神・淡路大震災の教訓として、災害の発生時において、子どもたちの安全を確保し、被害を最小限に留めるためには、学校の教職員が迅速かつ適切な行動をとることが不可欠であり、そのための防災教育の充実や大規模地震発生時の危機管理、学校の早期再開に向けた手順などを平素からよく話し合って決めておくことの大切さを学んだ。
(2) 精神保健の専門家によれば、PTSDは被災直後には顕在化しにくいが、一連の対応が片づいた後に被災体験を現実のものとして受け入れていく過程において発症し、その症状は数年以上にも及ぶことがあると言われている。我が国では震災から4年半が経過しようとしているが、心のケアを必要とする子どもが今なお多く、このため、国の配慮もあって、被災地の学校を中心に教育復興担当教員を200名余り、特別に配置している。

別紙5
(5)仮設住宅の管理体制
 (岩崎靖:市建設局公園砂防部管理課管理係長)
1.現状
 1) 各被災地ごとの仮設住宅の被災戸数を把握するためのバックデータを把握していない。
 2) 予定地が明確にされておらず、住民に何の情報も提供されていない。また、建設予定地を決定する際に、住民の意思が反映される余地がない。
 3) 仮設住宅の建設後の入居事務及び管理・運営に関する問題点の整理ができていない。

2.提言
 1) 各被災地ごとにテント生活者を分類し、個別データを把握するための実態調査を行う。
 2) 建設予定地を決定する際、弱者(高齢者・障害者)対策を検討し、仮設住宅の使用に反映させる。(トルコの国情にあったコミュニティ)
 3) 仮設住宅の建設と並行して、仮設住宅のソフト面を担当する組織体制を整備し、入居基準(優先順位・募集方法・決定方法など)及び、仮設住宅管理・運営基準を作成する。

3.根拠
 1) 被災者の個別データを把握することにより、避難者の意向・要望を知り、避難所の運営、仮設住宅への以降及び自立に向けての施策をスムーズに実施するため。
 2) 高齢者・障害者においては、身体的、精神的に虚弱でテント生活が困難であり、早期の対応を実施する必要があるため。
 3) 仮設住宅がすべて同時期に完成するのは不可能である。従って、順次入居をスムーズに行うため、入居基準を被災者に早急に提示し、混乱が生じないよう、理解を得るため。


別紙6
(6)テント村の運営
 (林芳宏:市市民局市民安全推進室安全企画課推進係長)
1.トルコの現状
 1) 冬に備え、雨や寒さに対する対策を早急に実施しなくてはならない。
 2) テント生活者の多くは、家が壊れたからではなく、余震の不安から家に戻れない。
 3) テント村以外に、被災者が地域に分散し、把握が難しい。
 4) 支援に人手が足りない。
 5) 被災者に支援情報を伝える手段がいる。

2.提言
 1) テント村の生活水準をあげる
 ・被災者でない人を家に返す。
 ・寒さ対策をはじめ、生活環境を改善する。
 ・テント村を地域全体の拠点にする。
 2) 被災者の自立を助ける支援が必要
 ・自炊できる施設などを充実し、自立を目指した支援を行う。
 ・段階的なテント村の解消策を今から考える。
 3) 1999年をトルコのボランティア元年に
 ・きめ細かな支援には、関係機関とボランティアの連携が必要

3.根拠
 1) 被災地でのヒヤリング調査から(テント村被災者、各県市災害対策本部など)
 ・家を失った多くの人が、仮設住宅への入居を望んでいる。
 ・被災者の一番の心配は、寒さ対策。11月までに対応がいる。
 ・テント村には、余震が怖くて家に帰れない人が多くいる。
 ・テント村の一番の苦情は、生活環境の整備。担当者が個々に対応している。
 ・小規模のテント村では、支援の手が十分にさしのべられていない。
 2) 被災地の実態調査から(主にイズミット市)
 ・仮設トイレ、風呂などの設備が足りない。
 ・プライバシー確保のため、じゅうたんや毛布を使っている。
 ・多くのテントには、チャイの道具があり、みんなで楽しんでいる。
 ・テント村には、ボランティア団体が被災者の支援活動に活躍しはじめている。
 ・救援物資の配布には、軍とボランティア団体が協力して活動していた。
 3) 神戸市での取り組みから(震災後の対応)
 ・神戸の避難所は、600カ所、24万人(最大)、7カ月(最長)。地域の支援拠点になった。
 ・実態調査を2回実施し、被災者のニーズと数をつかんだ。これにより、被災者支援を実態に合わせ、仮設住宅の建設戸数をつかんだ。
 ・避難所解消策として、ライフラインの復旧時期に食事配布の減少、仮設住宅の募集時期に住宅相談を実施。さらに、自立を支援するために、自炊できる避難所を新設した。
 ・寒さ対策として、断熱マットの配布、ストーブの設置を実施。
 ・雨対策として、ビニールシート、すのこを、プライバシー確保のため、パネルを配布。

別紙7
(7)ボランティア対策
 (柏野繁樹:県生活文化部生活創造課主幹)
1.現状
 1) 救急・救助や医療などの専門的知識を有するボランティアは充実しており、医薬品も十分のようである。
 2) 訪問した数カ所の避難所では、食糧は十分である反面、介護サービス、入浴サービス、衛生の向上などが不足しているとする、被災者もいた。
 3) また、訪問先の避難所で会えた一般ボランティアは数名であった。

2.提言
 1) ボランティアコーディネーターの設置
 ボランティアの要請と供給を調整するボランティアコーディネーターを設置し、被災者とサービスの提供者の情報交流を進める。
 2) 自立復興支援のための長期的なボランティアキャンペーンの実施
 被災者の避難生活や自立を支援するボランティア活動を進めるため、ボランティア交流大会やフォーラムを実施する。

3.根拠
 1) 身近な生活の分野においても支援を必要としている被災者がいる。
 2) 経験のないボランティアでも活動できる場がある。
 3) 避難所〜仮設住宅〜恒久住宅へと復興が進んでも、それに対応したボランティアの要請が存在する。


別紙8
(8)被災者の自立に向けた経済的支援
 (古川厚夫:都市計画局再開発部六甲道南再開発事務所事業第2係長)

1.現状
 1) 被災地での食糧・水は充足している印象を受け、被災者も落ち着いているようである。
 2) 時間の経過とともに、個々のニーズにあった生活物資が必要となってきており、資金援助を求める声も増えてきている。
 3) 義捐金は国が一括で管理しており、地方自治体は関与していない。しかし、集められた義捐金の額、配分方法などの情報が公開されていない。

2.提言
 1) トルコの国情、生活習慣に合った被災者の納得できる方法で、義捐金を早期に配分すること。
 2) 継続的に義捐金を確保するため、被災地の状況を発信し続けること。
 3) 生活再建に向けての道筋を付けるための経済的支援を実施すること。

3.根拠
 1) 義捐金の配分は迅速性、効果性、公平性が必要でもあり、寄付者の善意を活かさなければならない。しかし、神戸の震災においても、すべての被災者を満足させることは難しく、配分方法などを決めるのは非常に困難な問題であった。
 ※神戸の例 住宅の全半壊→1,740米ドル、障害者・高齢者など→2,600米ドル、住宅再建→2,600米ドル
 2) 配分方法などの情報を公開することにより、被災者の生活再建への不安、寄付者の不信感などが取り除かれる。
 3) 生活再建には、仮設住宅などの物質的支援や被災者の心のケアなどの精神的支援の他に、資金による経済的支援が非常に重要である。経済的支援のプログラムを整備することで、計画的に生活再建のめどが立てられる。
 ※神戸の例 公的見舞金の支給、公的資金融資、税金・医療費・学費の軽減など、また、被災後3年目で被災者自立支援金という新たな制度を創設した。


別紙9
(9)建物の解体
 (加藤利明:市理財局財政部経理課工事契約係長)

1.トルコ地震の現状
 1) 建物の被害状況
 トルコでは、鉄筋コンクリート造の建物がパンケーキ状に倒壊しており、神戸でよく見られた挫屈(損傷した柱の階部分だけ崩れた状態)した建物は余り見かけない。また、傾斜した建物もあり、これは神戸でも同じである。
 2) 被災した建物の解体状況
 道路上に倒壊した建物は、撤去されていて、交通事情は問題なかった。しかし、イズミット市においては、市が解体しようとしても、人も機会も全く不足しており、解体は進んでいないとの説明を受けた

2.提言
 1) 被災した建物を一斉ではなく、3つに分類し、優先順位を付けること
 ア.早期に解体を完了させるもの(2次災害防止)
 イ.早期に着手し、慎重に解体を完了させるもの(行方不明者)
 ウ.中期的に解体させるもの(軽度の被害、修理可能)
 2) 地図情報システム(GIS)を使った防災システムを確立すること。

3.根拠
 1)
 ア=隣家や道路上に傾斜している建物は、二次災害を引き起こす危険性がある。
 イ=また、パンケーキ状に倒壊した建物は、その中に行方不明者の遺体がある場合もあり、慎重な解体が必要である。
 ウ=しかし、損傷しているが、倒壊していない建物については、応急危険度判定を待って、所有者に解体するか否かを判断するための一定の時間を与える必要がある。
 2) 地図情報システムは、被害状況の把握にとどまらず、被害状況の予測、都市計画、上下水道の管理、消防・救急活動などに大きな効果をもたらす。そのためには、建物・土地の基準データの整備が重要であることはいうまでもない。

別紙10
(10)がれきの処理
 (尾崎敏之:市環境局業務部産業廃棄物指導課主査)
1.現状
 1) 家屋の解体とが歴の撤去がほとんど進んでいない
 2) 今後の余震により道路上に倒壊し、さらに死傷者が出る恐れがある。
 3) がれきが海に棄てられたり、勝手なところに棄てられる。

2.提言
 1) 安全な解体・処分
 1:危険な建物について、緊急に国が解体すること
 2:建物の解体やがれきの撤去の時に、水道の復旧が前提となるが、十分な散水により粉じんの発生を防ぐこと。
 2) 確実な処分と再利用
 1:がれきを勝手なところに捨てないよう、早急に仮置き場を複数造ること。
 2:長期的には仮置き場での分別によりコンクリートを中心に再利用すること。

3.根拠
 1) 神戸においても、最初は家屋の解体やがれきの撤去に伴い、粉じんが舞い上がり、人々の健康が非常に心配された。
 2) がれきの撤去を早急に行うことで、人々の復興への気持ちが出てくる。


別紙11
(11)住宅と都市の復旧計画
 (富岡敏典:県まちづくり部総務課主幹)
<1>応急仮設住宅の供給
1.建設計画(現状)

 阪神・淡路大震災
設置戸数 48,300戸
箇所数  634団地
面積   約29m2
設備   ユニットバス・トイレ、給湯器、エアコン、キッチン
支給品  暖房器具、寝具、炊事道具、食器、日用品
供給期間 当初2年間、その後3年に延長
用地   公園、学校グラウンド、スポーツ施設など

 マルマラ地震
設置戸数 50,000戸
箇所数   −
面積   約30m2
設備   シャワータブ、電気湯沸かし器、洗面台、クローゼット、キッチン台、照明器具
支給品  電気ストーブ2台、ガスコンロ、電気代、ガス燃料代
供給期間 1年6カ月
用地

 ※日本から地球資源の有効活用の観点から供給される仮設住宅については、トルコの人の住生活にできるだけ配慮した設備仕様を検討。

2.提言
 限定された居住期間であっても、被災者にとって安心して住めるという視点が必要。
 a 建設場所の選定については、立地条件に留意する必要。
 ・もとの居住地に近いところ、生活利便施設のあるところ、まちの再建に支障のないところ、水はけの良いところ、電気・水道・下水処理の整備が容易な場所。
 b 団地内を一つのまちと考えて、コミュニティの形成に寄与できる敷地内道路、空き地の確保などに配慮した敷地レイアウトが必要。
 c 生活利便施設が近くにない場合は、地域内に、仮設診療所、ミニ・コンビニ、公衆電話、仮設教室、地域集会所、臨時バス路線の運行などを仮設住宅団地の規模に応じて、整備する必要がある。
 d そのた、敷地内に必要なもの
 ・ゴミ集積場、入居者の一覧表示

<2>安全な住まいとまちづくり
1.現状
 マルマラ地震では、72,412棟もの建物が全壊・半壊したために、14,000名以上の人命が損なわれた。

2.提言
 地震の発生頻度と人命尊重及び復興の社会コストを考えると、災害に強いまちづくり(都市計画、市街地整備)と地震に強い建物づくりが重要である。そのため、対応策として、
 a 「災害に強く、安全で安心できるまちづくり」という視点を基本に据えた都市復興計画を策定する必要がある。→都市計画及び市街地整備の諸課題
 b 災害に強い安全で安心できる建物作りを進めていく必要がある。
 ・既存建築物の耐震診断と耐震補強
 ・定められた耐震基準による工事施工の徹底指導
 ・新規建築物の構造の安全性チェックシステムの拡充・徹底
 ・工事施工者に対する建築物の性能補償制度の導入

 ※参考
 地震の衝撃の大きさに対して、建物の地盤の状況及び建築物の構造的強度の相関関係により、建物被害の発生状況は異なってくる。
 1) 建物被害発生の事例
 ・軟弱地盤に建設した建物
 ・5ー6階建ての中層建築物
 ・被災建築物のRC構造部分のコンクリートがれきを見ると、コンクリートに混入している石の密度が低い事例。
 ・建物基礎部分が用意に壊れている事例
 2) 市街地に中層の集合住宅が多いことが、人的被害を大きくしている。
 阪神・淡路 全半壊・247,486棟 死者・6,394名 B/A・2.6%
 トルコ   全半壊・72,412棟 死者・14,095名 B/A・19.5%

3.阪神・淡路大震災の教訓とまちづくりの課題(根拠)
 1) 教訓
 a 自然との共生
 ・土地の性状に配慮した土地利用
 b 水と緑の大切さ
 ・都市防災と都市環境の点からの水と緑のネットワーク
 c 都市機能の分散配置
 d バランスの取れた交通体系の整備
 e 都市基盤施設の体系的整備の重要性
 ・市街地のメンテ規制日、道路・公園・広場などの根幹的な公共施設の整備とその適正配置、必要なオープンスペースの確保
 f 建築物の耐震・不燃化
 g 地域コミュニティを育むまちをつくる
 h 体系的な防災拠点の整備
 i 多様で多元的な通信手段の整備と普及
 j 都市生活を支えるライフライン整備の重要性

 2) 兵庫県における都市復興の基本方針
 a 災害に強い多核・ネットワーク型都市づくり
 b 安心して暮らせる都市づくり
 c 21世紀に向けた都市づくり

別紙12
(12)自立、互助、共助、
 (谷口正洋:県防災企画課事務吏員)
1.現状
 1) 地震によってもたらされた惨状になす術がなく、恐怖から回避しようとする住民の姿。
 2) 同じく、あまりにも大きな被害にどういう手順で復興を進めていけばいいのかを迷っている行政担当者。
 3) テント村を訪問しても親類や近所の人と一緒に避難してきている様子。

2.提言
 1) 防災教育の充実を図ること
 2) 地域住民での救助活動ができる体制を整備すること

3.根拠
 1) 現実的に地震を予知することは難しいから、地震は起こるものとしてとらえ、被害を最小限に留めることを考えていくべきである。
 ・実際、地震が発生したときにどのように避難すればよいのか分からないという人たちが多くいることから、小さいころからの地震に対する学校教育を充実させるとともに、地域レベル、事業所レベルでの防災知識の普及、防災意識の高揚を謀る必要がある。
 2) 被災地域の避難者に尋ねたところ、親類縁者が比較的近くで住んでいて、近所同士のつきあいも日本より親密であることが分かった。
 ・そこで、地域住民ができる範囲内で災害に備える体制を作り、自主的に救援活動を行う組織作りは比較的容易であると考えられる。
 ・は同時多発的に被害が発生し、広範囲に及び、通常の救助体制では限界があるため、被災地にいる人の活動が1人でも多くの人命を救うことにつながる。
 ・阪神・淡路大震災の発生した地域でも、近隣の住民によって多くの人が救い出されている。
 ・それ以降、被災地ではこのような自主防再組織が各所に結成され、防災資機材の購入やそれらを活用した訓練に、行政も支援し、成果を上げている。
 ・また、この組織を活用し、地域の災害情報を共有することや、研修会を開催するなどの取り組みを進めることができれば、防災意識の高揚にもつながる。
 ・トルコにおいても、この力をいかすべきである。


トップ|index|中川 和之

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