大規模地震対策特別措置法


昭和五十三年六月十五日法律第七十三号

大規模地震対策特別措置法(全文)

最終改正 昭和六十一年十二月四日法律第九十三号

(目的)
第一条
 この法律は、大規模な地震による災害から国民の生命、身体及び財産を保護するため、地震防災対策強化地域の指定、地震観測体制の整備その他地震防災体制の整備に関する事項及び地震防災応急対策その他地震防災に関する事項について特別の措置を定めることにより、地震防災対策の強化を図り、もつて社会の秩序の維持と公共の福祉の確保に資することを目的とする。

(定義)
第二条
 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
 一 地震災害
  地震動により直接に生ずる被害及びこれに伴い発生する津波、火事、爆発その他の異常な現象により生ずる被害をいう。
 二 地震防災
  地震災害の発生の防止又は地震災害が発生した場合における被害の軽減をあらかじめ図ることをいう。
 三 地震予知情報
  気象業務法(昭和二十七年法律第百六十五号)第十一条の二第一項に規定する地震に関する情報及び同条第二項に規定する新たな事情に関する情報をいう。
 四 地震防災対策強化地域
  次条第一項の規定により指定された地域をいう。
 五 指定行政機関
  災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)第二条第三号に規定する指定行政機関をいう。
 六 指定地方行政機関
  災害対策基本法第二条第四号に規定する指定地方行政機関をいう。
 七 指定公共機関
  災害対策基本法第二条第五号に規定する指定公共機関をいう。
 八 指定地方公共機関
  災害対策基本法第二条第六号に規定する指定地方公共機関をいう。
 九 地震防災計画
  地震防災基本計画、地震防災強化計画及び地震防災応急計画をいう。
 十 地震防災基本計画
  中央防災会議が地震防災対策強化地域について地震防災に関し作成する基本的な計画をいう。
 十一 地震防災強化計画
  災害対策基本法第二条第九号に規定する防災業務計画、同条第十号に規定する地域防災計画又は石油コンビナート等災害防止法(昭和五十年法律第八十四号)第三十一条第一項に規定する石油コンビナート等防災計画のうち、第六条第一項各号に掲げる事項について定めた部分をいう。
 十二 地震防災応急計画
  第七条第一項又は第二項に規定する者が地震防災応急対策に関し作成する計画をいう。
 十三 警戒宣言
  第九条第一項の規定により内閣総理大臣が発する地震災害に関する警戒宣言をいう。
 十四 地震防災応急対策
  警戒宣言が発せられた時から当該警戒宣言に係る大規模な地震が発生するまで又は発生するおそれがなくなるまでの間において当該大規模な地震に関し地震防災上実施すべき応急の対策をいう。

(地震防災対策強化地域の指定等)
第三条
 内閣総理大臣は、大規模な地震が発生するおそれが特に大きいと認められる地殻内において大規模な地震が発生した場合に著しい地震災害が生ずるおそれがあるため、地震防災に関する対策を強化する必要がある地域を地震防災対策強化地域(以下「強化地域」という。)として指定するものとする。
 2 内閣総理大臣は、前項の規定による強化地域の指定をしようとするときは、あらかじめ中央防災会議に諮問しなければならない。
 3 内閣総理大臣は、第一項の規定による強化地域の指定をしようとするときは、あらかじめ関係都道府県知事の意見を聴かなければならない。この場合において、関係都道府県知事が意見を述べようとするときは、あらかじめ関係市町村長の意見を聴かなければならない。
 4 内閣総理大臣は、第一項の規定により強化地域の指定をしたときは、その旨を公示しなければならない。
 5 第三項の規定は、内閣総理大臣が第一項の規定による強化地域の指定の解除をする場合に準用する。

(強化地域に係る地震に関する観測及び測量の実施の強化)
第四条
 国は、強化地域に係る大規模な地震の発生を予知し、もつて地震災害の発生を防止し、又は軽減するため、計画的に、地象、水象等の常時観測を実施し、地震に関する土地及び水域の測量(以下この条及び第三十三条において「測量」という。)の密度を高める等観測及び測量の実施の強化を図らなければならない。

(地震防災基本計画)
第五条
 中央防災会議は、第三条第一項の規定による強化地域の指定があつたときは、当該強化地域に係る地震防災基本計画を作成し、及びその実施を推進しなければならない。
 2 地震防災基本計画は、警戒宣言が発せられた場合における国の地震防災に関する基本的方針、地震防災強化計画及び地震防災応急計画の基本となるべき事項その他政令で定める事項について定めるものとする。
 3 災害対策基本法第三十四条第二項の規定は、第一項の地震防災基本計画を作成し、又は修正した場合に準用する。

(地震防災強化計画)
第六条
 第三条第一項の規定による強化地域の指定があつたときは、災害対策基本法第二条第九号に規定する指定行政機関の長(指定行政機関の長から委任された事務については、当該委任を受けた指定地方行政機関の長。以下同じ。)及び指定公共機関(指定公共機関から委任された業務については、当該委任を受けた指定地方公共機関。以下同じ。)は同号に規定する防災業務計画において、同法第二十一条に規定する地方防災会議等(市町村防災会議を設置しない市町村にあつては、当該市町村の市町村長。以下同じ。)は同法第二条第十号に規定する地域防災計画において、石油コンビナート等災害防止法第二十七条第一項に規定する石油コンビナート等災害防災本部(第二十八条第二項において「石油コンビナート等防災本部」という。)及び同法第三十条第一項に規定する防災本部の協議会は同法第三十一条第一項に規定する石油コンビナート等防災計画において、次の事項を定めなければならない。
 一 地震防災応急対策に係る措置に関する基準
 二 避難地、避難路、消防用施設その他当該大規模な地震に関し地震防災上緊急に整備すべき施設等で政令で定めるものの整備に関する事項
 三 当該大規模な地震に係る防災訓練に関する事項その他大規模な地震に係る地震防災上重要な対策に関する事項で政令で定めるもの
 2 地震防災強化計画は、地震防災基本計画を基本とするものとする。

(地震防災応急計画)
第七条
 強化地域内において次に掲げる施設又は事業で政令で定めるものを管理し、又は運営することとなる者(前条第一項に規定する者を除く。)は、あらかじめ、当該施設又は事業ごとに、地震防災応急計画を作成しなければならない。
 一 病院、劇場、百貨店、旅館その他不特定かつ多数の者が出入りする施設
 二 石油類、火薬類、高圧ガスその他政令で定めるものの製造、貯蔵、処理又は取扱いを行う施設
 三 鉄道事業その他一般旅客運送に関する事業
 四 前三号に掲げるもののほか、地震防災上の措置を講ずる必要があると認められる重要な施設又は事業
 2 第三条第一項の規定による強化地域の指定の際、当該強化地域内において前項の政令で定める施設又は事業を現に管理し、又は運営している者(前条第一項に規定する者を除く。)は、当該指定があつた日から六月以内に、地震防災応急計画を作成しなければならない。
 3 地震防災応急計画を作成した者は、当該施設の拡大、当該事業の内容の変更等により、地震防災応急計画を変更する必要が生じたときは、遅滞なく当該計画を変更しなければならない。
 4 地震防災応急計画は、当該施設又は事業についての地震防災応急計画に係る措置に関する事項その他政令で定める事項について定めるものとする。
 5 地震防災応急計画は、地震防災強化計画と矛盾し、又は抵触するものであつてはならない。
 6 第一項又は第二項に規定する者は、に地震防災応急計画を作成したときは、政令で定めるところにより、遅滞なく当該地震防災応急計画を都道府県知事に届け出るとともに、その写しを市町村長に送付しなければならない。これを変更したときも、同様とする。
 7 第一項又は第二項に規定する者が前項の届出をしない場合には、都道府県知事は、その者に対し、相当の期間を定めて届出をすべきことを勧告することができる。
 8 都道府県知事は、前項の勧告を受けた者が同項の期間内に届出をしないときは、その旨を公表することができる。

(地震防災応急計画の特例)
第八条
 前条第一項又は第二項に規定する者が、次に掲げる計画又は規程において、法令の規定に基づき、同条第一項の政令で定める施設又は事業に関し同条第四項に規定する事項について定めたときは、当該事業について定めた部分(次項において「地震防災規程」という。)は、当該施設又は事業に係る地震防災応急計画とみなしてこの法律を適用する。
 一 消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第八条第一項若しくは第八条の二第一項に規定する消防計画又は同法第十四条の二第一項に規定する予防規程
 二 火薬類取締法(昭和二十五年法律第百四十九号)第二十八条第一項に規定する危害予防規程
 三 高圧ガス取締法(昭和二十六年法律第二百四号)第二十六条第一項に規定する危害予防規程
 四 ガス事業法(昭和二十九年法律第五十一号)第三十条第一項(同法第三十七条の七第三項で準用する場合を含む。)に規定する保安規程
 五 電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第五十二条第一項に規定する保安規程
 六 石油パイプライン事業法(昭和四十七年法律第百五号)第二十七条第一項に規定する保安規程
 七 石油コンビナート等災害防止法第十八条第一項に規定する防災規程
 八 前各号に掲げる計画又は規程に準ずるものとして総理府令で定めるもの
 2 地震防災規程を作成した者は、前条第六項の規程にかかわらず、政令で定めるところにより、その地震防災規程の写しを市町村長に送付しなければならない。地震防災規程を変更したときも、同様とする。

(警戒宣言等)
第九条
 内閣総理大臣は、気象庁長官から地震予知情報の報告を受けた場合において、地震防災応急対策を実施する緊急の必要があると認めるときは、閣議にかけて、地震災害に関する警戒宣言を発するとともに、次に掲げる措置を執らなければならない。
 一 強化地域内の居住者、滞在者その他の者及び公私の団体(以下「居住者等」という。)に対して、警戒態勢を執るべき旨を公示すること。
 二 強化地域に係る指定公共機関及び都道府県知事に対して、法令又は地震防災強化計画の定めるところにより、地震防災応急対策に係る措置を執るべき旨を通知すること。
 2 内閣総理大臣は、警戒宣言を発したときは、直ちに、当該地震予知情報の内容について国民に対し周知させる措置を執らなければならない。この場合において、内閣総理大臣は、気象庁長官をして当該地震予知情報に係る技術的事項について説明を行わせるものとする。
 3 内閣総理大臣は、警戒宣言を発した後気象庁長官から地震予知情報の報告を受けた場合において、当該地震の発生のおそれがなくなつたと認めるときは、閣議にかけて、地震災害に関する警戒解除宣言を発するとともに、第一項第一号に規定する者に対し警戒態勢を解くべき旨を公示し、及び同項第二号に規定する者に対し同号に掲げる措置を中止すべき旨を通知するものとする。

(地震災害警戒本部の設置)
第十条
 内閣総理大臣は、警戒宣言を発したときは、国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第八条の三の規定にかかわらず、臨時に総理府に地震災害警戒本部(以下「警戒本部」という。)を設置するものとする。
 2 警戒本部の名称、所管区域並びに設置の場所及び期間は、内閣総理大臣が閣議にかけて決定する。

(警戒本部の組織)
第十一条
 警戒本部の長は、地震災害警戒本部長(以下第十三条までにおいて「本部長」という。)とし、内閣総理大臣(内閣総理大臣に事故があるときは、そのあらかじめ指名する国務大臣)をもつて充てる。
 2 本部長は、警戒本部の事務を総括し、所部の職員を指揮揮督する。
 3 警戒本部に、地震災害警戒副本部長、地震災害警戒本部員その他の職員を置く。
 4 地震災害警戒副本部長は、国務大臣をもつて充てる。
 5 地震災害警戒副本部長は、本部長を助け、本部長に事故があるときは、その職務を代理する。
 6 地震災害警戒本部員その他の職員は、指定行政機関の職員又は指定地方行政機関の長若しくはその職員のうちから、内閣総理大臣が任命する。

(警戒本部の所掌事務)
第十二条
 警戒本部は、次に掲げる事務をつかさどる。
 一 所管区域において指定行政機関の長、指定地方行政機関の長、地方公共団体の長その他の執行機関、指定公共機関及び指定地方公共機関が実施する地震防災応急対策又は災害対策基本法第五十条第一項に規定する災害応急対策(以下「地震防災応急対策等」という。)の総合調整に関すること。
 二 次条の規定及び第十五条において準用する災害対策基本法第二十八条第一項の規定により本部長の権限に属する事務
 三 前二号に掲げるもののほか、法令の規定によりその権限に属する事務

(本部長の権限)
第十三条
 本部長は、地震防災応急対策等を的確かつ迅速に実施するため特に必要があると認めるときは、その必要な限度において、関係指定地方行政機関の長、関係地方公共団体の長その他の執行機関、関係指定公共機関及び関係指定地方公共機関に対し、必要な指示を行うことができる。
 2 本部長は、地震防災応急対策を的確かつ迅速に実施するため、自衛隊の支援を求める必要があると認めるときは、防衛庁長官に対し、自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第八条に規定する部隊等の派遣を要請することができる。

(警戒本部の廃止)
第十四条
 警戒本部は、当該地震予知情報に係る地震災害に関し災害対策基本法第二十四条第一項に規定する非常災害対策本部若しくは同法第百七条第一項に規定する緊急災害対策本部が設置された時又は警戒本部の設置期間が満了した時に、廃止されるものとする。

(警戒本部に関する災害対策基本法の準用)
第十五条
 災害対策基本法第二十四条第三項、第二十七条及び第二十八条第一項の規定は、警戒本部が設置された場合に準用する。この場合において、同法第二十七条第一項中「災害応急対策」とあるのは、「災害応急対策又は大規模地震対策特別措置法第二条第十四号の地震防災応急対策」と読み替えるものとする。

(都道府県地震災害警戒本部及び市町村地震警戒本部の設置)
第十六条
 警戒宣言が発せられたときは、強化地域に係る都道府県知事又は市町村長は、都道府県地震災害警戒本部(以下「都道府県警戒本部」という。)又は市町村地震災害警戒本部(以下「市町村警戒本部」という。)を設置するものとする。

(都道府県警戒本部の組織及び所掌事務等)
第十七条
 都道府県警戒本部の長は、都道府県地震災害警戒本部長とし、都道府県知事をもつて充てる。
 2 都道府県警戒本部に、都道府県地震災害警戒副本部長、都道府県地震災害警戒本部員その他の職員を置く。
 3 都道府県地震災害警戒副本部長は、都道府県地震災害警戒本部員のうちから当該都道府県の知事が任命する。
 4 都道府県地震災害警戒副本部長は、都道府県地震災害警戒本部長を助け、都道府県地震災害警戒本部長に事故があるときは、その職務を代理する。
 5 都道府県地震災害警戒本部員は、次に掲げる者をもつて充てる。
 一 当該都道府県の区域の全部又は一部を管轄する指定地方行政機関の長又はその指名する職員
 二 当該都道府県を警備区域とする陸上自衛隊の方面総監又はその指名する部隊若しくは機関の長
 三 当該都道府県の教育委員会の教育長
 四 警視総監又は当該道府県の道府県警察本部長(第二十三条第五項において「警察本部長」という。)
 五 当該都道府県の知事がその部内の職員のうちから指名する者
 六 当該都道府県の区域内の市町村及び消防機関の職員のうちから当該都道府県の知事が任命する者
 七 当該都道府県の地域において業務を行う指定公共機関又は指定地方公共機関の役員又は職員のうちから当該道府県の知事が任命する者
 6 都道府県地震災害警戒副本部長及び都道府県地震災害警戒本部員以外の都道府県警戒本部の職員は、当該都道府県の職員のうちから、都道府県知事が任命する。
 7 都道府県警戒本部は、次に掲げる事務をつかさどる。
 一 当該都道府県の地域において指定地方行政機関の長、市町村の長その他の執行機関、指定公共機関及び指定地方公共機関が実施する地震防災応急対策等の連絡調整に関すること。
 二 当該都道府県の地域に係る地震防災応急対策等の実施及び実施の推進に関すること。
 三 次項の規定により都道府県地震災害警戒本部長の権限に属する事務
 四 前二号に掲げるもののほか、法律又はこれに基づく政令によりその権限に属する事務
 8 都道府県地震災害警戒本部長は、当該都道府県警察又は当該都道府県の教育委員会に対し、当該都道府県の地域に係る地震防災応急対策等を実施するため必要な限度において、必要な指示をすることができる。
 9 前各号に規定するもののほか、都道府県警戒本部に関し必要な事項は、当該都道府県の条例で定める。
 10 都道府県警戒本部が設置されている場合においては、災害対策基本法第十四条第一項に規定する都道府県防災会議は、同条第二項の規定にかかわらず、同項第一号から第三号までに掲げる事務で当該地震予知情報に係る地震災害に関するものを行わないものとする。

(市町村警戒本部の組織及び所掌事務等)
第十八条
 市町村警戒本部の長は、市町村地震災害警戒本部長とし、市町村長をもつて充てる。
 2 市町村警戒本部は、次に掲げる事務をつかさどる。
 一 当該市町村の地域に係る地震防災応急対策等の実施及び実施の推進に関すること。
 二 次項の規定により市町村地震災害警戒本部長の権限に属する事務
 三 前二号に掲げるもののほか、法律又はこれに基づく政令によりその権限に属する事務
 3 市町村地震災害警戒本部長は、当該市町村の教育委員会に対し、当該市町村の地域に係る地震防災応急対策等を実施するため必要な限度において、必要な指示をすることができる。
 4 前三号に規定するもののほか、市町村警戒本部の組織その他必要な事項は、当該市町村の条例で定める。

(都道府県警戒本部又は市町村警戒本部の廃止)
第十九条
 都道府県警戒本部又は市町村警戒本部は、当該都道府県又は市町村に当該地震予知情報に係る地震災害に関し災害対策基本法第二十三条第一項に規定する災害対策本部が設置された時時に、廃止されるものとする。
 2 都道府県警戒本部又は市町村警戒本部は、第九条第三項の警戒解除宣言があつたときは、速やかに廃止するものとする。

(地震予知情報の伝達等に関する災害対策基本法の準用)
第二十条
 災害対策基本法第五十一条の規定は地震予知情報の伝達について、同法第五十二条の規定は警戒宣言が発せられた場合における防災に関する信号について、同法第五十五条から第五十七条までの規定は都道府県知事又は市町村長が警戒宣言が発せられたことを知つた場合について準用する。この場合において、同法第五十一条中「、公共的団体並びに防災上重要な施設の管理者(以下第五十八条において「災害応急対策責任者」という。)」とあるのは、「その他大規模地震対策特別措置法第二条第十四号の地震防災応急対策の実施の責任を有する者」と読み替えるものとする。

(地震防災応急対策及びその実施責任)
第二十一条
 地震防災応急対策は、次の事項について行うものとする。
 一 地震予知情報の伝達及び避難の勧告又は指示に関する事項
 二 消防、水防その他の応急措置に関する事項
 三 応急の救護を要すると認められる者の救護その他保護に関する事項
 四 施設及び設備の整備及び点検に関する事項
 五 犯罪の予防、交通の規制その他当該大規模な地震により地震災害を受けるおそれのある地域における社会秩序の維持に関する事項
 六 緊急輸送の確保に関する事項
 七 地震災害が発生した場合における食糧、医薬品その他の物資の確保、清掃、防疫その他の保健衛生に関する措置その他応急措置を実施するため必要な体制の整備に関する事項
 八 前各号に掲げるもののほか、地震災害の発生の防止又は軽減を図るための措置に関する事項
 2 警戒宣言が発せられたときは、指定行政機関の長、指定地方行政機関の長、地方公共団体の長その他の執行機関、指定公共機関、地震防災応急計画を作成した者その他法令の規定により地震防災応急対策の実施の責任を有する者は、法令又は地震防災計画の定めるところにより、地震防災応急対策を実施しなければならない。
 3 前項に規定する者は、地震防災応急対策を的確かつ円滑に実施するため相互に協力しなければならない。

(住民等の責務)
第二十二条
 警戒宣言が発せられたときは、強化地域内の居住者等は、火気の使用、自動車の運行、危険な作業等の自主的制限、消火の準備その他当該地震に係る地震災害の発生の防止又は軽減を図るため必要な措置を執るとともに、市町村長、警察官、海上保安官その他の者が実施する地震防災応急対策に係る措置に協力しなければならない。

(市町村長の指示等)
第二十三条
 市町村長は、警戒宣言が発せられた場合において、第七条第六項又は第八条第二項の規定による送付をした者(政令で定める者を除く。)が第二十一条第二項の規定による地震防災応急対策の実施をしていないことが明かであると認めるときは、その者に対し、直ちにその実施をすべきことを指示することができる。
 2 市町村長は、警戒宣言が発せられた場合において、第七条第一項又は第二項に規定する者で同条第六項又は第八条第二項の規定による送付をしていない者(政令で定める者を除く。)が管理し、又は運営する施設又は事業に関し、当該地震の発生により危険な事態が生ずるおそれがあると認めるときは、当該危険な事態の発生を防止するため、その者に対し、執るべき措置を明示してこれを直ちに実施すべきことを指示することができる。
 3 市町村長は、警戒宣言が発せられたときは、当該地震の発生により危険な事態を生ずるおそれがあると認められる物件の占有者、所有者又は管理者(第六条第一項又は第七条第一項若しくは第二項に規定する者を除く。)に対し、地震災害の発生の防止又は軽減を図るため必要な限度において、直ちに当該物件の除去、保安その他必要な措置を執るべきことを指示することができる。
 4 前三項に規定するもののほか、市町村長は、警戒宣言が発せられた場合において、当該地震に係る地震災害の発生の防止又は軽減を図るため必要があると認めるときは、前三項に規定する者に対し、必要な措置を執るべきことを要請し、又は勧告することができる。
 5 都道府県知事、警察本部長又は政令で定める管区海上保安本部の事務所の長は、市町村長から要求があつたときは、前各号に規定する指示、要請又は勧告をすることができる。

(交通の禁止又は制限)
第二十四条
 強化地域に係る都道府県又はこれに隣接する都道府県の都道府県公安委員会は、警戒宣言が発せられた場合において、当該強化地域内の居住者、滞在者その他の者の避難の円滑な実施を図るため必要があると認めるとき、又は地震防災応急対策に従事する者若しくは地震防災応急対策に必要な物資の緊急輸送その他地震防災応急対策に係る措置を実施するための緊急輸送を確保するため必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、必要な限度において、歩行者又は車両の通行を禁止し、又は制限することができる。

(避難の際における警察官の警告、指示等)
第二十五条
 警察官は、警戒宣言が発せられた場合において、避難に伴う混雑等において危険な事態が発生するおそれがあると認めるときは、当該危険な事態の発生を防止するため、危険を生じさせ、又は危害を受けるおそれのある者その他関係者に対し、必要な警告又は指示をすることができる。この場合において、警察官は、特に必要があると認めるときは、危険な場所への立入りを禁止し、若しくはその場所から退去させ、又は当該危険を生ずるおそれのある道路上の車両その他の物件の除去その他必要な措置をとることができる。

(地震防災応急対策に係る措置に関する災害対策基本法の準用)
第二十六条
 災害対策基本法第五十八条、第六十条、第六十一条、第六十三条、第六十七条、第六十八条、第七十四条及び第七十九条の規定は、警戒宣言が発せられた場合に準用する。この場合において、同法第五十八条中「災害応急対策責任者」とあるのは「大規模地震対策特別措置法第二条第十四号の地震防災応急対策の実施の責任を有する者」と、同法第六十条第三項中「報告」とあるのは「報告し、及び管轄警察所長に通知」と読み替えるものとする。
 2 災害対策基本法第七十二条の規定は、警戒宣言が発せられた場合に都道府県知事が市町村長に対して行う指示について準用する。
 3 災害対策基本法第八十六条の規定は、地震防災応急対策に係る措置を実施するため必要な国有財産等の貸付け又は使用について準用する。

(応急公用負担の特例)
第二十七条
 市町村長は、地震防災応急対策に係る措置を実施するため緊急の必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、当該市町村の区域内の他人の土地、建物その他の工作物を一時使用し、又は土石、竹木その他の物件を使用することができる。
 2 災害対策基本法第六十三条第二項の規定は、前項の場合に準用する
 3 都道府県知事は、第二十一条第一項第四号から第八号までに掲げる事項について地震防災応急対策に係る措置を実施するため特に必要があると認めるときは、災害救助法(昭和二十二年法律第百十八条)第二十五条から第二十七条までの規定の例により、協力命令若しくは保管命令を発し、土地、家屋若しくは物資を使用し、若しくは物資を収用し、又はその職員に物資の所在する場所若しくは物資を保管させる場所に立入検査をさせ、若しくは物資を保管させた者から必要な報告を徴することができる。
 4 前項の規定による都道府県知事の権原は、政令で定めるところにより、その一部を市長村長に委任することができる。
 5 指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長は、第二十一条第一項第四号から第八号までに掲げる事項について地震防災応急対策に係る措置を実施するため特に必要があると認めるときは、地震防災強化計画の定めるところにより、当該措置の実施に必要な物資の生産、集荷、販売、配給、保管若しくは輸送を業とする者に対し、その取り扱う物資の保管を命じ、又はその職員に物資の所在する場所若しくは物資を保管させる場所に立入検査をさせ、若しくは物資を保管させた者から必要な報告を徴することができる。
 6 国又は地方公共団体は、第一項、第三項又は前項の規定による処分が行われたときは、それぞれ、当該処分により通常生ずべき損失を補償しなければならない。
 7 第三項又は第五項の規定による処分については、都道府県知事若しくは市町村長又は指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長は、政令で定めるところにより、それぞれ公用令書を交付して行わなければならない。
 8 前項の公用令書には、政令で定めるところにより、次の事項を記載しなければならない。
 一 公用令書の交付を受ける者の氏名及び住所(法人にあつては、その名称及び主たる事務所の所在地)
 二 当該処分の根拠となつた法律の規定
 三 保管命令にあつては保管すべき物資の種類、数量、保管場所及び期間、土地又は家屋の使用にあつては使用する土地又は家屋の所在する場所及び当該使用に係る期間、物資の使用又は収用にあつては使用又は収用する物資の種類及び数量、物資の所在する場所並びに当該使用又は収用に係る期間又は期日
 9 災害対策基本法第八十三条の規定は、第三項の規定により都道府県の職員が立ち入る場合及び第五項の規定により指定行政機関又は指定地方行政機関の職員が立ち入る場合に準用する。

(避難状況等の報告)
第二十八条
 市町村長は、警戒宣言が発せられたときは、政令で定めるところにより、当該市町村の居住者等の避難の状況等を都道府県警戒本部に報告しなければならない。この場合において、都道府県地震災害警戒本部長は、当該報告の概要を警戒本部に通知しなければならない。
 2 市町村長は都道府県警戒本部に対し、指定行政機関の長、指定公共機関の代表者、都道府県地震災害警戒本部長又は石油コンビナート等防災本部の本部長は警戒本部に対し、それぞれ、政令で定めるところにより、地震防災応急対策に係る措置の実施状況を報告しなければならない。

(補助等)
第二十九条
 国は、地震防災強化計画に基づき緊急に整備すべき施設等の整備に関する事業が円滑に実施されるようにするため、予算の範囲内において、当該事業の実施に要する経費の一部を補助し、その他必要と認める措置を講ずることができる。

(地震防災応急対策に要する費用の負担)
第三十条
 法令に特別の定めがある場合又は予算の範囲内において特別の措置を講じている場合を除くほか、地震防災応急対策に要する費用その他この法律の施行に要する費用は、その実施の責めに任ずる者が負担するものとする。

(財政措置に関する災害対策基本法の準用)
第三十一条
 災害対策基本法第九十二条の規定は第二十六条第一項において準用する同法第六十七条第一項、第六十八条第一項又は第七十四条第一項の規定による応援に要した費用について、同法第九十三条の規定は第二十六条第二項において準用する同法第七十二条の規定による都道府県知事の指示に基づいて市町村長が実施した地震防災応急対策に係る措置に要した費用及び応援のために要した費用について、同法第九十四条の規定は地震防災応急対策に要する費用について、同法第九十五条の規定は第十三条第一項の規定による地震災害警戒本部長の指示に基づいて地方公共団体の長が実施した地震防災応急対策等に係る措置に要した費用について準用する。

(強化地域に係る地震防災訓練の実施)
第三十二条
 第三条第一項の規定による強化地域の指定があつたときは、当該地域に係る指定行政機関の長、指定地方行政機関の長、地方公共団体の長その他の執行機関、指定公共機関、地震防災応急計画を作成した者その他法令の規定により地震防災応急対策の実施の責任を有する者は、法令又は地震防災計画の定めるところにより、それぞれ又は共同して地震に係る防災訓練を行わなければならない。
 2 都道府県公安委員会は、前項の地震に係る防災訓練の効果的な実施を図るため特に必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、当該訓練の実施に必要な限度で、道路の区間を指定して、歩行者又は車両の通行を禁止し、又は制限することができる。
 3 第一項に規定する者は、同項の防災訓練を行おうとするときは、住民その他関係のある公私の団体に協力を求めることができる。

(科学技術の振興等)
第三十三条
 国は、地震の発生を予知するため、地震に関する観測及び測量のための施設及び設備の整備に努めるとともに、地震の発生の予知に資する科学技術の振興を図るため、研究体制の整備、研究の推進及びその成果の普及に努めなければならない。

(特別区についてのこの法律の適用)
第三十四条
 この法律の適用については、特別区は、市とみなす。

(政令への委任)
第三十五条
 この法律に特別の定めがあるもののほか、この法律の実施のための手続きその他この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。

(罰則)
第三十六条
 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
 一 第二十七条第三項の規定による都道府県知事(同条第四項の規定により権限の委任を受けた市町村長を含む。)の協力命令又は保管命令に従わなかつた者
 二 第二十七条第五項の規定による指定行政機関の長又は指定地方行政機関の長(第十五条において準用する災害対策基本法第二十七条第一項の規定により権限の委任を受けた職員を含む。)の保管命令に従わなかつた者

第三十七条
 第二十四条の規定による都道府県公安委員会の禁止又は制限に従わなかつた車両の運転者は、三月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

第三十八条
 次の各号のいずれかに該当する者は、十万円以下の罰金に処する。
 一 第二十七条第三項(同条第四項の規定により権限の委任があつた場合を含む。以下この条において同じ。)又は第五項(第十五条において準用する災害対策基本法第二十七条第一項の規定により権限の委任があつた場合を含む。以下この条において同じ。)の規定により立入検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
 二 第二十七条第三項又は第五項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者

第三十九条
 次の各号のいずれかに該当する者は、五万円以下の罰金又は拘留に処する。
 一 第二十条において準用する災害対策基本法第五十二条第一項の規定に基づく総理府令によつて定められた防災に関する信号をみだりに使用し、又はこれと類似する信号を使用した者
 二 第二十六条第一項において準用する災害対策基本法第六十三条第一項の規定による市町村長又は同条第二項の規定による警察官若しくは海上保安官の禁止若しくは制限又は退去命令に従わなかつた者

第四十条
 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第三十六条又は第三十八条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。


トップ|index|中川 和之