大規模災害における応急救助のあり方

平成8年5月
厚生省・災害救助研究会



研究会報告を受けた今後の対応


 1.大規模災害への迅速・的確な対応

 (1) 大規模災害を想定した基準を設定するなど災害救助法の運用の抜本的見直し応急救助の程度、方法、期間等を定めた現行の基準は大規模災害を想定していないとの批判もあったことから、阪神・淡路大震災における対応を踏まえ、大規模災害に一括適用する新たな基準を現行基準とは別に設定するなど現行基準を見直す。

【設定事項例】
□ 避難所
  ・設置期間の延長(7日→6月程度)
  ・間仕切り、冷暖房機器、仮設風呂等の生活環境の整備
  ・福祉避難所(仮称)の設置
□ 応急仮設住宅
  ・供与期間の延長(建築基準法特例の援用)
  ・冷暖房機器、集会所等の生活環境の整備
  ・解体撤去費の負担のあり方
□ その他
  ・食料・水、生活必需品の提供、医療の実施等に関する事項で大規模災害に伴うもの
  
 (2) 災害救助運用指針(災害救助マニュアル)の作成
研究会の提言等を踏まえ、実施体制、情報の収集・提供、応急救助の方法等に関し地方公共団体が取り組むべき事項と内容を「災害救助運用指針」として取り纏める。

【主な事項例】
□ 実施体制
  ・職員の参集体制、広域的応援体制の整備(自治体間の人的・物的な支援協定等)等
□ 情報収集・提供
  ・多様な通信手段の確保、被災者への迅速・的確な情報の提供等
□ 避難所
  ・学校、社会福祉施設の利用、管理責任者の配置、運営マニュアルの作成等
□ 応急仮設住宅
  ・民有地の確保、多様なタイプの提供、仕様の改善、入居決定の工夫、コミュニテイ−づくりへの配慮(集会所の設置)、入居者への保健・医療・福祉サ−ビスの提供等
□その他
  ・救護班の派遣、食料・水の供給、生活必需品の提供、遺体の処理等に関する必要事項

2.高齢者・障害者等の要援護者へのきめ細かな配慮
 (1) 保健・医療・福祉施策の充実
災害時に保健・医療・福祉サ−ビスを適切に提供するためには平常時からの地道な取組みが必要であることから、老人保健福祉計画等に基づきホ−ムヘルパ−の増員、特別養護老人ホ−ムの建設等の保健・医療・福祉施策の充実を図るとともに、以下の対策を講じる。

 (2) 福祉避難所(仮称)の設置
 災害時に通常の避難所では生活しにくい要援護者を一時的に受け入れるため、社会福祉施設を福祉避難所(仮称)としてあらかじめ指定する。

 (3) 要援護者への対応指針の作成
 研究会の提言を踏まえ、要援護者に対するきめ細かな対応策を災害救助運用指針に盛り込む。
【主な事項例】
 福祉事務所の安否確認、視覚・聴覚障害者への適切な情報提供避難所相談窓口の設置、バリアフリ−の確保、社会福祉施設での介護用品の備蓄、精神保健対策の充実、市町村福祉部局の要員確保と担当業務ガイドラインの作成等

 3. ボランティア活動と行政の連携・支援     

 (1) ボランティア活動支援のための基盤の整備
 ボランティア保険の普及、各種基金からの助成、ボランティアコ−ディネ−タ−の養成研修の充実等を図る。

 (2) ボランティア活動支援のための指針(ガイドライン)の作成
 研究会の提言を踏まえ、ボランティアと行政との連携・支援方策を整理した指針を作成する。
【主な事項例】
 活動拠点づくり、活動参加プログラムの作成、受入窓口の明確化、コ−ディネ−ト機関の役割の整理、団体のネットワ−ク化等

 (3) 救援物資・義援金の取扱に関する指針の作成
 研究会の提言を踏まえ、救援物資・義援金の受入れ・配分を迅速・的確に実施するための方策を整理した指針を作成する。
【主な事項例】
 ニ−ズに即した物資の受入れ、集積基地・配送ル−トの確保、仕分け・表示・配分の工夫等
※ 義援金について、募集・配分基準・公表等のガイドラインの作成が提言されており、現在日本赤十字(義援金問題懇談会)において検討中。

 4.災害救助に関する調査研究・研修事業の推進   

 災害救助に関する調査研究、研修等を総合的に推進する。
【主な事業例】
 調査・研究 災害救助の事例の収集・分析・整理、応急仮設住宅のタイプの多様化・仕様の改善に関する研究、保存食の研究、関連出版物の刊行
 研修事業 地方公共団体職員等の研修

【注】災害救助法の改正について                        
@ 災害救助法では、災害救助に関する基本的事項が定められており、災害の規模・態様に応じた弾力的な対応が可能な仕組みとなっている。
A 災害救助研究会の提言はいずれも法律改正を要しなくても実施できる。


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