新しいニッポンの常識に=本格運用が始まった緊急地震速報

月刊フェスク・08年2月号

中川和之 時事通信社防災リスクマネジメントWeb編集長

 昨年10月から、緊急地震速報の本格運用が始まり、人的な被害があり得る震度5弱を上回る揺れが予測された際に、テレビなどで一斉に放送されることになりました。気象業務法も改正され、12月からは世界で初めての地震の「警報」と位置づけられました。でも、年末までの3カ月間、テレビなどで放送されたことはありません。どうなったのかと思われている人も少なくないでしょう。日本全国で同じ情報を出すNHKの放送を想定すると、昨年1年間では、能登半島地震や新潟県中越沖地震があったため、年9回、情報が出される計算になりますが、大きな地震がなかった一昨年ではたった3回になります。放送エリア内の最大震度で放送する民放テレビ局の場合、テロップなどで緊急地震速報が伝えられることはめったにないでしょう。私たちは、身近に専用の受信端末がなく、放送でもめったに流れない緊急地震速報とどう付き合ったらいいのでしょうか。改めておさらいするとともに、いざというときだけでなく、日ごろの減災につなげる方法も考えてみましょう。

◇〔付き合い方・その1=どんな仕組み?〕全国1000点で素早くキャッチし情報伝達

 緊急地震速報とは、どんな情報でしょうか。地面の中で地震波が伝わる時の特徴と、地震波より早く伝わる電気信号を使って、強い揺れに襲われる直前に、これから強く揺れることを知らせてくれる情報です。「周囲の状況に応じて、あわてずに、まず身の安全を確保する」を基本に、倒れそうな家具から身を守ったり、落下物を避けたりするなど、身の安全を図ることができます。列車やエレベーターを安全に止めたり、工事現場では危険な作業を中断したり、工場で重量物の近くから退避したりもできます。

 この情報はどんな仕組みで出すことができるのでしょうか。
 地震の際、少し強めの揺れを感じたことがある人なら、最初にガタガタっと来た後に、ゆさゆさと揺れるのを体感したことがあるでしょう。地震による被害は、地下の岩盤がずれて生じた地震波が地表まで伝わることで起きるのですが、この地震波には、地面を強く揺らすS波と、S波よりも揺れは弱いものの早く伝わるP波の2種類の波があります。、「初期微動」と言われるP波のガタガタという揺れを解析して、震源の位置と発生した地震の規模をわずかな時間で推定することができます。その結果を、秒速数キロの地震波よりも早い秒速30万キロで伝わる電気信号で伝えることで、強い揺れが起き始める前に情報を届けることができる緊急地震速報になるのです。

 19世紀のアメリカ・カリフォルニア州では地震の波と電波電気信号の速度の差に気づいて、地震の発生を電信と教会の鐘で市民に伝えるというアイデアが提案されたことがあるそうです。日本では、1972年に東大教授らが海底地震計を置いて地震をキャッチして都市が揺れる前に情報を出す「10秒前大地震警報システム」を提唱しています。1990年代になって、鉄道総合技術研究所が開発した「ユレダス」が、東海道新幹線から順次、各新幹線などで実際に導入されました。海外でも300キロ離れた太平洋岸のプレート境界地震で被害を受けやすい盆地構造のメキシコシティで地震警報システムとして運用されています。今回開発された緊急地震速報のように国全体を対象としたシステムは世界で初めてです。

 気象庁と防災科学技術研究所が展開する約1000個所の地震計からのデータは気象庁に集められ、より早く伝わるP波の解析結果を元に、地震が発生した場所と地震の規模、予測される震度と揺れの到達予想時刻を算出して、緊急地震速報として発信します。情報を受け取った側でも、緊急地震速報の情報を元に、震源との距離やその場所の地盤データと合わせて計算し、現在地でどの程度の揺れが何秒後に来るかをより詳しく算出することができます。
 P波とS波の時間差や電気信号との差、つまり緊急地震速報を受け取ってから強く揺れるまでの猶予時間は、震源と近いほど小さくなります。P波の解析に2ー3秒かかることと合わせると、震源の真上付近では強い揺れに間に合わないという原理的な限界があります。また震度の予測において±1程度の誤差が予想されます。実際、2007年の新潟県中越沖地震では震度6強を観測した新潟県長岡市や飯綱町では、揺れの数秒から20秒前に緊急地震速報が出すことができましたが、能登半島沖地震で被害が大きかった石川県輪島市や、中越沖地震での新潟県柏崎市や刈羽村では、強く揺れ始めてから情報が届くというタイミングになっています。
 緊急地震速報が有効性を発揮するのは、震源が遠いものの巨大で被害も広範囲に及ぶ海溝型地震です。東海地震では、静岡で10秒前後、名古屋や小田原で25秒、東京で40秒、東南海地震では名古屋に40秒程度前に情報が届くことが想定され。大きな被害を避ける最後のチャンスを与えてくれます。海溝型の地震は、地表の震度が大きくなくても高層ビルなどの巨大構造物が大きく揺れる長周期地震動を発生させますので、ビルの上層階にいる人たちにとっては不可欠な情報と言えるでしょう。

◇〔付き合い方・その2=放送ではどう伝えられる?〕全国一律のNHK、民放は放送エリアを対象に情報発信

 緊急地震速報は、04年2月から自治体や報道機関、ライフライン、病院などの一部で試験運用を開始し、06年8月から07年9月までは、746機関が先行的な提供を受けて、伝達手段や利活用方法の開発・実用化を図ってきました。07年10月から運用が始まった一般向けの緊急地震速報は、テレビやラジオでの情報伝達が前提になりました。テレビやラジオの電波は、広いエリアに向けて伝えられる利点がある一方、受け手がどこの場所にいるかを限定できません。受け手のいる場所が重要になる緊急地震速報を伝えるのは、放送には不得手な分野と言えます。気象庁が、導入を前提に05年11月から開催してきた「緊急地震速報の本運用開始に係る検討会」でも、NHKや民放局が当初は導入に難色を示していました。座長を務めていた故廣井脩東大社会情報研究所教授が、生前の最後の会議の場で「議論すればするほど難しい問題が出てくるというのが実感」と語っていましたが、放送での導入にあたって紆余曲折があったのも、放送エリアが広すぎるという問題が大きなテーマでした。

 このため、気象庁では、震度情報で用いる地域名称と同じように、あらかじめ全国を約200地域に分割しておき、震度5弱の強い揺れが想定された場合、東北や関東などの広域、都道府県と、200地域の地域名と推定震度を発表する緊急地震速報を、一般向け情報とすることにし、07年10月1日から発表を開始しました。この情報は、12月1日から「緊急地震速報(警報)」となりました。また、何度も情報を更新しにくい放送メディアの事情を考えて、原則として情報の更新は行わないことになりました。また、揺れ始めるまでのカウントダウンも、数キロ場所が異なると1秒ずれてくるので、受け手の場所が特定できない放送では出さないことになりました。

 放送では、この一般向け情報を使って伝えますが、NHKと、民放テレビ局では流す情報が異なっています。
 NHK(1)では、地上波もBSもハイビジョンもラジオもFMも、全国一律で同じ情報を流すことにしています。独自に開発した「チャリン、チャリン」という感じのチャイム音を流し、テレビでは、画面の4分の1ほどの大きさの枠に、緊急地震速報という文字と「○○で地震 強い揺れに警戒」として、震度5弱以上が予想される都道府県名を表示し、震央の場所と都道府県が分かる地図を表示します。ラジオは、番組を中断してアナウンスされます。気象庁からのデータが入ったら、すべて自動的に処理されるよう、システム的に準備されています。
 NHKの緊急地震速報で気をつけねばならないのは、チャイム音が鳴ったからといって、必ずしも自分の住んでいる地域でないかも知れないことです。他の地域であっても地震で身の安全を図る訓練になると考えるぐらいのつもりで、画面やアナウンスを素早く確認して行動する必要があります。

 民放テレビ局は、東京のキー局と大阪や名古屋の準キー局、ローカル局で、それぞれ放送エリアが異なります。首都圏や関西圏では、同じ電波を広範に届けているため、複数の都府県を対象にその対象地内で震度5弱以上の地震が発生した場合にテロップ情報で伝えたり、放送対象エリアの地元都県名を優先して表示したりします。また、文字だけでなく、一目で分かるよう地図でも示す局もあります。
 民放では、放送エリアごとに放送できる利点を生かし、県単位で放送している民放局は、その県が対象の情報が出された場合に限って発信することにしている局が大半で、東西に長い静岡県の場合は「静岡県東部」など県内を分割した地域名を民放テレビ局がそろって使うことにしています。この場合は情報を受けたら確実に防災行動を取る必要があります。
 民放ラジオ局は、静岡放送ラジオが07年11月から「ドライバーは十分注意してください」というコメント付きで流すことを決めていますが、08年4月からの導入を図る局が大半。在京の4AM局と2FM局は、ドライバーに混乱を来すとして震度5強以上という独自の基準で放送することにしています。

◇〔付き合い方・その3=放送以外ではどう伝わる?〕携帯電話で無料提供、企業では多様に利用

 テレビやラジオ以外では、緊急地震速報はどう伝えられるのでしょうか。
 緊急地震速報は、一般の気象情報と同様に、気象庁から気象業務支援センターを経由して、情報利用者に届けられます。ここまでは、マスメディアも、他の利用者も同じです。気象業務の民営化で発足した財団法人の同センターから、気象情報を受け取っているのは民間気象会社やマスメディアがほとんどです。緊急地震速報は、IT系の事業者やゼネコン、防災関係企業など多様な企業が、情報を受信して、配信事業やシステム構築などをビジネスにしようとしています。

 民間企業は、事故防止の延長線上にある防災対策にとどまらず、大災害後も事業を続けられるための事業継続計画(BCP)を作ることが求められています。ITや自動車業界などでは、BCPの策定や更新が契約条件になっているほどです。このため、配信サービスを行う事業者からは、緊急地震速報を使って従業員の危険回避だけでなく、生産設備の制御やデータスリーブ、連絡用電話回線の自動起動、工事現場向けの日単位リース提供など、さまざまな提案が行われています。
 実際、日本経団連の防災に関する委員会が会員企業に行った07年5〜6月の調査では、205社・団体のうち5割以上が、緊急地震速報の導入か予定があると回答しています。創意工夫は、日本の民間企業の得意技ですから、新たな使い方が考えられていくでしょう。

 現在の緊急地震速報を受信するには、受け手までつながる回線が必要です。民間企業などは専用線で受信していますが、多くの家庭に情報を届けられる回線を持つCATV事業者が、リースや買い上げの形で提供する専用端末と共に配信事業を始めています。価格的にもリースで月500円や、購入で2万円台と、比較的安価なサービスになっているのも特徴です。緊急地震速報が受信できるマンションや、集合住宅のインターホンシステムを受信機にして配信するサービスも提案されています。エレベーターの閉じこめ防止のための停止機能とリンクしていたりします。緊急地震速報を企業が多様に使っていくことで、ユーザーが増えれば端末は劇的に安くなることを期待しています。

 一般の人が、直接、緊急地震速報を受信する切り札になると見られているのが携帯電話です。携帯電話では、ワンセグでテレビ放送を受信でき、テレビで伝えられる情報を知ることもできますが、携帯電話独自の機能として07年12月から、NTTドコモが新機種の携帯電話向けに緊急地震速報の無料サービスを開始(2)。AUは08年3月下旬から、ソフトバンクも08年度内に始める予定です。
 NTTドコモのサービスは、通常のメールやインターネットの仕組みではなく、近くの基地局アンテナとの間で交信している電波を使って届ける「エリアメール」で伝えます。AUも同様の仕組みで提供します。これは、アンテナが何本立っているかの電波と言えば分かりやすいでしょう。携帯電話に電源さえ入っていれば、待ち受け状態で基地局との間で交信しているので、震度5弱以上の強い揺れが予想される範囲の基地局から一斉に電波を出し、受信機能を持った携帯電話にアラーム音とともに「○○で地震発生 強い揺れに注意して下さい」というメッセージが表示されます。現在は、配信処理に10秒かかりますが、海溝型の巨大地震には十分有効で、携帯電話の機種交換のタイミングからしても、数年のうちに多くの方は携帯電話を通じて受信できるようになると思います。インターネットに接続できるパソコンがあれば、気象情報会社が月300円で提供するサービスも出てきています。

 多くの人が集まる場所で、緊急地震速報はどう伝えられようとしているのでしょうか。日本百貨店協会では、消費者の意識調査で「百貨店などで緊急地震速報を流して欲しくない」と回答した人は1.3%で、適切な案内誘導を求める人が大半だったこともあり、07年9月に店内放送を可能にする機器の整備や訓練プログラムなどを求めた利用ガイドラインを作りました。建物が耐震化されていた場合「ただいま緊急地震速報が発表されましたが、当館は安全です。落ち着いて係員の指示に従って下さい」というようなアナウンス例が示されています。
 1日15万人が利用する東京駅・八重洲口の八重洲地下街では、一般利用が始まる前から緊急地震速報を導入してテナント従業員が参加する訓練も実施。揺れが収まった後の誘導や、火のそばにいる飲食店従業員の危険回避なども徹底しています。受信時には警報音と共に「こちら防災センター。まもなく地震の大きな揺れが来ます。近くの柱や壁際に寄って身の安全を守って下さい」という館内放送を流すことにしています。

◇〔付き合い方・その4=どう対応すればいい?〕百聞は一見にしかず

 緊急地震速報を、実際に受け取った際にどう対応すればいいのでしょうか。実は、何も特別なことは求められていません。地震がいきなり起きた際に取るべき行動を、少し前から行うだけなのです。「周囲の状況に応じて、あわてずに、まず身の安全を確保する」というのはそういうことなのです。それでも、その状況に直面しないとなかなか、イメージが湧きません。
 気象庁では「その時、あなたはどうする! 緊急地震速報のしくみと心得」(3)という啓発ビデオを作成し、ホームページから自由にダウンロードして見ることができるようにしています。
 家庭内編では、朝食中にテレビで緊急地震速報が流れたという状況で、まず失敗例として、緊急地震速報を知らないで「地震が来る。どうしたらいい」とあわてておろおろし、棚の上から頭の上に箱が落ちてきてしまう夫と、転倒する食器棚の脇で子どもを抱きかかえるしかできない妻の姿を描きます。適切な対処例として、子どもを机の下にはいるよう促しながら、居間のドアを開けて避難路を確保する夫と、台所で手元の火を消してすぐに机の下に向かう妻という状況を演じています。火のそばにいなければ、わざわざ消しに行くと危ないということも伝えています。
 ショッピングセンターの場面では、店員の言うことを聞かないで勝手に逃げようとする女性にあおられて、周囲の客も一斉に逃げ出して通路で転倒する人が出るという失敗例と、店員の「頭を保護してしゃがんで」という指示に従って揺れに備える様子を再現しています。
 運転中の緊急地震速報では、いきなり急ブレーキを踏んで追突されてしまうケースと、ハザードランプを付けてゆっくり停車する正しい方法を分かりやすく伝えています。

 このほか、気象庁のビデオには入っていませんが、「鉄道・バス乗車中は、揺れ始めに備えて、つり革や手すりにしっかりつかまる」、「エレベーターの中では全部の階のボタンを押して最寄りの階で停止させてすぐに降りる」、「街中では、看板や割れたガラスの落下に注意してビルのそばから離れ、丈夫なビルなら中に避難する。ブロック塀の倒壊等に注意する」、「山やがけ付近では、落石やがけ崩れに注意する」−という対処が、適切な対応行動として、気象庁のリーフレットに取り上げられています。

 実際、07年7月の新潟県中越沖地震の際には、先行利用で導入していた東京・足立区の区立千寿本町小学校では、保護者も参加したスポーツ大会の最中に緊急地震速報を受信し、日ごろから訓練していた小学生がガラスが割れる危険が少ない中央部に集まって、頭を保護して重心を低くしている様子をみて、保護者もおなじように集まって安全な姿勢をとったところで震度3の揺れが来たそうです。震度4となった長野県の松本市役所でも15秒前にアラームが鳴り、職員が机の下に隠れると共に、来庁者にも危険な場所からの避難を呼びかけました。

 緊急地震速報がどういうものか、どう対処すればいいかは、本格運用直前にNHKが3カ月間に渡って集中的に「広告」したビデオ映像は、いまでもインターネットで見ることができます。また、子ども向けやドライバー向けのリーフレットも、気象庁のホームページからダウンロードできます(5)。運転免許の更新時には、緊急地震速報を聞いた際の対処策の講習が行われています。

 千寿本町小学校の避難訓練は緊急地震速報から始めています。07年12月に東京・新宿の工学院大学で行われた全学の防災訓練も、緊急地震速報のアナウンスから始まりました。地震が起きたという想定で行われる訓練は少なくないですが、その最初を緊急地震速報で始めることは難しくありません。インターネットに接続環境があれば、NHKのWebサイトで「チャリンチャリン」のチャイム音を鳴らしてみせることもできます。気象庁のリーフレットは、自由に印刷ができますので、訓練の際に刷って参加者に配付することもできます。ワンパターン化してしまっている地域の防災訓練に、新しい趣向として取り入れればいいのです。
 自治体庁舎や公共施設、民間オフィスや集客施設などのために「緊急地震速報の利活用の手引き」(6)が気象庁で作られており、マニュアルの作り方や施設内の安全チェックなどに役立てることもできます。

 大きな地震はめったにありません。緊急地震速報に合わせた対処策を常識にするには、ネット上などにある様々な資源も活用してこの情報の存在を繰り返し伝えることが必要です。

 ちなみに、緊急地震速報の限界でもある直下の地震は、受信できる環境なのに緊急地震速報が伝えられる前に揺れ始めたとしたら、情報が間に合わない直下の地震だと覚悟を決め、すぐ机の下に潜るなど対応行動を取ればよいと私は考えています。

◇〔付き合い方・その5=大切なことは?〕緊急地震速報は最後の手段

 忘れてはならないのは、緊急地震速報は地震防災対策の最後の手段だと言うことです。気象庁の「一般向け緊急地震速報の利用の心得」(7)でも、緊急地震速報を活かすためには、以下のような基本的な防災対策の徹底が不可欠と指摘しています。まず、身の安全を図ることができる状況を作っておくということなのです。
1.住宅・建造物の耐震化
2.家具・什器などの転倒・移動防止
3.備品の落下防止
4.ガラスなどの飛散防止
5.地震時に身を守るための行動や方法
6.安全な場所の確認
7.防災訓練の実施

 携帯電話やテレビではなく、専用の受信端末でなければできないのは、小さい地震から事前に伝えることです。震度3の地震でもガタガタと揺れ始めて「あっ、地震だ」と感じた後、一瞬、身の危険を感じたりします。大きな地震でなくとも、その情報を事前に知っておくことで、余計な不安を感じないで済みます。一般利用前から使われている方から「弱い揺れでも事前に情報が伝えられることで、地震を身近に感じられる」とよく聞きました。

 地震対策が難しいのは、雨や雪のように眼には見えませんし、気象衛星ひまわりでの雲の画像のように観測することもできません。地震災害をイメージすることが、防災対策で重要だと言われるのは「見えない」という難しさがあるからでもあります。緊急地震速報では、震度5弱以上の「警報」と異なり、震度3以上を「予報」と位置づけています。「警報」のアラームは、NHKの「チャリンチャリン」を含めて、緊張を誘う音ですが、できれば震度3や4の場合は「びっくりする程度ではないけど、地震だよ」と伝えてくれるようなアラーム音で伝える仕組みを作ってもらえないかと願っています。

 そのような緊急地震速報の受信装置が普及して、警報の受信機としてだけでなく、ちょっとした地震を身近に感じる装置として使われるようにまでなると、ニッポンの地震の常識が変わるのではないでしょうか。(了)

参考資料リンク

NHK緊急地震速報のページ(http://www.nhk.or.jp/bousai/)
NTTDoCoMo緊急速報「エリアメール」(http://www.nttdocomo.co.jp/service/anshin/areamail/)
気象庁ビデオ「その時、あなたはどうする! 緊急地震速報のしくみと心得」(http://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/sokuho_dvd/)
youtube「新潟県中越沖地震で緊急地震速報受信」(http://www.youtube.com/watch?v=LXuoMwesmfo)
気象庁リーフレット「緊急地震速報〜10月スタート〜」(http://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/sokuho2/)
気象庁子ども用リーフレット| 「緊急地震速報って知ってる!?」http://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/sokuho3/)
気象庁自動車運転者向けリーフレット | 「緊急地震速報?揺れより早く?」(http://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/sokuho6/)
気象庁「緊急地震速報の利活用の手引き」pdf(http://www.jma.go.jp/jma/press/0708/03a/rikatsuyou.pdf)
気象庁「一般向け緊急地震速報の利用の心得」pdf(http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/EEW/kaisetsu/kokoroe.pdf)


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